コストから逆算したプランニング(中編)

クライアントさんの視点から、家づくりがどのように見えて、実際にどのようなことが起きるのか、経験を基にシミュレートしました。ステップ1から4です。

「あなたは家を新築することになりました」

【ステップ1】
おおよその予算と要望を設計者に伝えて、一週間後、ラフプランができあがりました。具体的なスケッチを目にして、このような考え方があるのかと驚かれたり、それならばここはこうしたい、あそこはああしたいと、あなたのイメージと要望は、当初とは異なる視点を加えたものに変化してゆきます。

ご家族での話し合いや設計者との対話を続けるなかで、ラフプランは可能性が絞られ、そのぶんだけ具体性と深みを増して、基本設計案が完成しました。

【ステップ2】
模型で基本設計案を確認すると、その形や質感は、ほぼイメージどおりでした。この案を基に、実際の骨組みや下地、仕上げに至る、その家のすべての要素を書き込んだ実施(じっし)設計がはじまりました。描かれる図面の縮尺もより原寸に近い大きさになり、断面、そして建物すべての表面があらわれるまで、検討と作図が続けられます。

スケッチを目にしてイメージと要望がより具体的になったように、あなたは実施設計図を目にすることで、基本設計案ではイメージできなかった内容、例えば階段下を利用したPCコーナーのカウンター奥行き寸法、あるいはその脇のモデム収納用の棚の目隠しの方法、またはコンセントの差込口や配線を目立たないようにするにはどうすればよいのか、などを考えるようになります。

実施設計中には、そういった議題での打ち合わせが繰り返されます。打ち合わせを繰り返すほどに設計図は精度を上げ、内容を充実させて、やがて設計完了しました。

【ステップ3】
完成した実施設計図をもとにした、実際に工事をおこなう各専門工事業者からの見積書が集まりました。仕上げや仕様の再検討・取捨選択をおこない金額を確認すると、見積の合計額は無事予算内に収まりました。その内容に基づき専門工事業者とそれぞれ請負契約を締結して、さあいよいよ着工です。

地縄張り、地鎮祭、基礎工事、棟上、上棟式を経て、家はそのボリュームを次第にあらわし、外装内装が整うにつれて完成時のイメージに近づいてゆきます。

【ステップ4】
打ち合わせを何度も重ねてデザインや使い勝手を検討したけれど、あらためて現場で見ると下駄箱の位置は変更前の位置がよいと、あなたは思い直しました。

工事管理者に相談したらまだ再変更は可能とのことで、設置工事も無事完了しました。同じように現場での再検討を数箇所おこないながら工事は順調に進み、予定どおりに完成・引渡しを迎えました。

いかがでしたか?

ダイジェスト版でしたが、実際の家づくりもこのように
1:基本設計
2:実施設計
3:見積・工事金額の確定
4:着工~完成

といった、4つのステップを経て完成します。

そしてそのあいだ、各ステップにおいて建築主(クライアント)さんには「どの案を採用する(しない)のか」最終的な判断・決断を絶えず求められますが、それらの判断・決断には、

・その内容と、
・コスト

についての情報が不可欠です。

コストから逆算したプランニングとは、それらの判断・決断に対して「ここをこうしたら、これだけかかりますよ」といった、内容とコストについての助言をおこなうことにより、予算に対する現在位置を確認(逸れていれば軌道修正)しながら計画を進めてゆく手法です。

坪単価だけでは拾いきれない細やかな内容について、実施設計後の見積金額を補完できるだけの各金額の見極めは、計画内容の細分化個別化が進んだ昨今の家づくりにおいて、つくり手に必須であろうと考えています。

次回、これらをもう少し詳しく説明して、この話のまとめとします。

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