床下エアコン体験記 (本格的な寒さに備えて)

11月も中旬をすぎて、朝晩の冷え込みが一段ときびしくなりましたね。そこで今回は、室内の暖房方法のひとつである「床下エアコン」について、実例とクライアント様の体験談を交えながら、ご紹介します。

床下エアコン、とは文字通り、「床下空間をあたためるためのエアコン」のことで、あたためられた床下の空気を床上にも循環させて、建物(室内)全体をあたためる空調計画の総称としても用いられます。

その空調メカニズム、というか原理をずらずらと箇条書き(このあとで実際の事例をご覧いただくので、ここは読み飛ばしてもらっても大丈夫です^^;)にすると、

基礎断熱の床下(=室内空間と同じ環境)にあたたかい空気を送ると、

1:床下空間があたたかくなる
2:熱伝導により、1階の床があたたかくなる
3:床下の容積を超えた空気は、1階床の吹出口から吹き出して、1階の室内をあたためる
4:1階室内のあたたかい空気は上昇し、吹き抜けを経由して、2階の室内をあたためる
5:2階室内のあたたかい空気は、さらに上昇して2階の天井で留まり、
6:留まったあたたかい空気は、電動ファンで強制的に集められて、
7:ダクトを経由して床下空間に送られ、
8:床下空間があたためられて、熱伝導によって、1階の床はあたたかくなり・・・

を繰り返して、室内を一定の温度に、均一に保ちます。

近年のエアコン製品の高効率化に加えて、上のような循環を繰り返すほどに空調負荷が減ってゆくところから、エネルギー効率の非常に高い空調方式である、と言われています。

上の写真は、今年2月に竣工した「上乃木の家」のリビングの東側を写したものです。階段下に見える、壁面収納左下の地袋(じぶくろ)部分が、エアコンの設置場所です。

拡大するとこのような感じです(下がちょっと切れていますね・・すみません)。地袋正面の木製格子と上部の天板は、将来のメンテナンス等に備えて取り外し可能になっていて、地袋内部のエアコン室内機は、給気をおこなう上部が1階床上に突き出た状態の「半埋め」に設置してあります。ここから木製格子を経由して1階リビングの空気を取り入れ、床下にあたたかい空気を送り出すのですが、次第にリビング床面がほんのりと温かくなってゆくのは、床暖房の「それ」です。

送り込まれた床下空間のあたたかい空気は、床下の容積を超えると1階床面の吹出口(下の写真)から吹き出して、1階リビングを暖めます。そして、あたためられた空気は上昇して、吹き抜けを経由して2階をあたためてから、冒頭の箇条書きのように、2階天井面まで上昇したところで、ファンとダクトで強制的に床下へ戻されます。床下に戻った暖気はその後、吹出口、1階リビング、吹抜経由で2階、2階天井からまた床下へ、といった循環を繰り返します。

吹出口は 当初は室内の見えがかりを考慮して、エアコン設置位置からもっとも離れた対角方向となる、西側の壁面沿いの設置のみとしました。まずはひと冬過ごされて、そのうえで必要に応じて増設等を検討するお約束にしていたのですが、今秋のご相談・ご検討の結果、放射冷却をより抑えるために、ガラス窓の真下に2か所、吹出口を増設することとなり、先日、無事工事が完了しました。

上の写真は完了時のものです。窓下に見える二つの「グレーの長方形」が、増設した吹出口で、二重のスリットがスライドする構造により、開度が調節できるようになっています。製品はこれまでの事例同様(株)環境創機さんの吹出口を採用しています(一般の方も直接購入できるようになっていました)。

今回あらためてクライアント様に感想を伺ったのですが、建て替え前(築50年)の寒さとの比較となってしまうことを差し引いても、かなり快適に過ごしていただけているようで、とりわけ「リビングの床が全面ぬくぬく」の生理的快感は予想以上、とのことでした。

併せて光熱費の実績もこれまでのほぼ半額、といった結果となり、まだ1シーズン弱ではありますが、ランニングコスト削減にいくらかの貢献ができているようです(蛇足ながらコストについてもうひと言付け加えるならば、本計画ではイニシャルコスト削減においても、ご提案のかなりの部分を採用していただき、おかげさまで良い結果に繋げることができています)。

そして、ヒートポンプによる空気の加熱、が、エアコン暖房の原理ですから、この方法では、暖房時に室内の空気を燃焼に用いることはなく、よって、暖房による室内への水蒸気発生はないのですが、このことは結露防止のみならず、いまの時期に特に言えることとして、奥様が実感を込めておっしゃられたのは、

「部屋干しの洗濯物がよく乾く!!」

とのことでした(なるほど)。冬の室内対策について、もしよろしければこちらもどうぞ。※「家づくり資料室」

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