柳瀬(やなぜ)の海の家

ホームページ内の「家づくりの流れ」でも触れていますが、弊社は原則、基本設計の最終工程として、計画案の模型を作り、クライアント様にご覧いただいています。

基本設計プランに建物高さの情報を加え、作成した模型(縮尺50分の1)をご覧いただきながら、

・室内と外観のボリューム
・室内への光の入りかた
・外部からの室内の見えかた

などについて、確認と検討の打ち合わせをおこなうのですが、今回は、先日お渡しした模型をご紹介します。

南側立面、この建物の正面です。

主要道である県道から、ひと区画奥まった位置にある敷地は、面積が500平米を超えるほどで、騒音もなく、通風や採光なども申し分ありません。充分な広さを確保した庭、家庭菜園やアプローチなどの外部空間と室内との間には、全面に屋根の架かったウッドデッキと玄関ポーチを設け、「ウチとソト」とを繋ぐ、緩衝地帯の役割を持たせています。

玄関の左手に駐車場、そしてその奥にはサービスヤードを設け、サービスヤードはさらにその奥の勝手口へと繋がります。

建物正面からサービスヤード側に回り込んだ、西側の外観です。

上で書いたように、敷地南側(この写真では、建物の右手)は庭や家庭菜園のほか、おそらく臨時の駐車場としても十二分に活用できるほどの広さなのですが、 建物の裏側となる敷地北側(同左手)は、砂浜と港を介してあとは一面の日本海で、遠い先に霞んで見える水平線まで、海面が続きます。まさにオーシャンビュー、絶景です。

ただ、水平線から建物までの間を遮るものが何もないということは、海からの季節風は相当に強く、強風対策として、サービスヤード北側(左側)の躯体は、高さを通常の平屋よりも大きく(高く)取って、風除けと設備機器類と自動車への塩害対策の役割を強め、上部の「余った」スペースは、小屋裏収納と換気設備の点検スペースとする予定です。サービスヤードを囲む塀は風圧に負けないよう、コの字型平面になるよう組み、通用口も、塀が一体の構造となるよう、潜り戸としています。

北側立面です。

海からの強風対策として、1階居室に面する開口部には雨戸を設け、大屋根の軒の出は最小限に留めています。

ここからは余談ですが、建物中央に位置する、1階の引き違い窓は当初、掃き出し窓だったところを腰高に変更して、室内側の窓際にカウンターを設けることとなったのですが、その検討の際に出た、夏の夕暮れに水平線に沈みゆく夕陽を眺めながらカウンターでいただく、よく冷えたビールのお話には、少なからず心を揺さぶられました( ̄¬ ̄)

当日のクライアント様(ご主人が環境行政、奥様は音楽のプロフェッショナル)との打ち合わせのなかでは、ヨーロッパでの住宅の断熱事情において、ドイツでの視察経験をお持ちのご主人から、室内の温熱環境について、なかでも断熱の仕様、建物内の季節ごとの空気の流れ、機械による換気と室内空気の循環など、かなり鋭いご質問を受け、その度にしどろもどろになりながらも「この部分が・・」と具体的な箇所をお示しして、なんとか説明の体を成すことができたのは模型があってこそで、また、猫との共生のための各室の区切り方についても、上下階の繋がり、あるいは開口部の更に上部の納まりを、立体を手に取ってイメージを共有しながら、お話を進めることができたようです。

詳細は別の機会に譲りますが、本計画は、既存建物の構造材の再利用や、工場プレカットをおこなわない、大工さんの手刻みによる構造体、太陽光発電に頼らない再生可能エネルギーの利用など、いわゆる「従来型の家づくり」とは幾分異なる括りで、現在鋭意進行中です。

大田市内の計画です。

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