床下調査と防蟻処理 (メイキングオブ 「広い縁側の家」 )

今回は、昨年秋に竣工・お引き渡しとなった「広い縁側の家」の、床下調査と防蟻処理工事について、ご紹介します。

既存住宅の改修計画において、まず最初にしなければならないことは、「その建物の劣化度、傷み具合がどの程度なのか」を調べることです。

そうして調べた傷み具合をみながら、「改修計画を進めても問題ないのか」どうかを判断するのですが、その判断への重要な資料となるのが、床下の現況調査です。

調査は一昨年の秋、クライアント様、調査員さん、不動産業者さんと私の4名が現地集合して、おこないました。

和室の畳をめくり、座板を外して設けた進入口から、ヘッドランプとツナギと手袋と長靴で完全武装した、調査員(S社Mさん)さんが、床下へ潜入します。

潜入からおよそ20分後、ひととおりの調査を終えてMさんが戻ってきました。「撮れたて」の床下写真をみせてもらいながらのレクチャーによると、基礎立上りの一部に蟻道(シロアリ自作の、地中から木材をつなぐ通り道)の跡があったようですが、現在、シロアリは生息していない、とのことでした。

トイレと浴室の床下については構造上進入できず、解体後でなければ確認できなかったものの、それ以外の箇所については蟻害や腐食などは見つからず、仮に、トイレと浴室の構造材の全てを交換をすることになったとしても、その範囲に留まるならば想定内です。事前に確認していた小屋裏の状況とあわせて、これならば、本格的に改修計画を進めても大丈夫、問題ありません。

このような「ドキドキからホッとひと安心」を経て、耐震診断、基本設計、実施設計、積算見積と、耐震助成の交付決定までの諸申請を経たのちに着工した現場では、床構造が整ったところで「建物にシロアリを寄せ付けなくする工事」である、防蟻処理工事がはじまりました。

防蟻処理は、ホウ酸を用いた薬剤散布を選択しました。自然素材で人体への悪影響が無いことに加え、薬剤の効果、将来的な再検査と補償の費用とをあわせた時間当たりのコストを物差しにして比較検討すると、何種類かの選択肢のうちで、ホウ酸処理が最適、との答えにたどり着きました。

薬剤散布は、土台から1mまでの全ての木部、玄関、トイレと浴室と洗濯脱衣室とキッチンなどの水回りについては、土台から小屋梁までの全ての木部に対しておこなわれました。

上の写真は、洋室西側壁面の処理後の様子です。薬剤処理(=濡れ色)の様子は、土台や柱などよりも、外壁下地のパーティクルボード(柱の奥の焦げ茶色)のほうが、比較的わかりやすいかもしれません。

こちらは脱衣洗濯室です。先述のように、玄関および水回りへの薬剤は、小屋梁(土台から約2.7m上部)まで、散布されています。

以下は「恥ずかしながら・・」の余談です。

今回の工事範囲を、一般的な薬剤処理の「建物外周部の、地盤面から高さ1mまで」であると思い込んでいた私は、ここなら大丈夫だろうと、建物内側の一角と外周部の地盤面1m以上の位置に、工程管理用のホワイトボードなどを避けて置いていたのですが、先述の通りの絨毯爆撃(建物構造にとってはより良いことなのですが)によって、丁寧に養生してもらった隙間から僅かに薬剤が付着してしまい、一部分が「がさがさ」※になってしまいました(^^;

その後の現場の様子(ブログ)については、こちら からご覧ください。

※その後の水拭きで元通りになって、無事、現場復帰^^しました。