コストから逆算したプランニングその0

「2010年代の、コストから逆算したプランニング」について書きます。今日は総論です。

家づくりにおけるさまざまな創意工夫やアイディアはすべて、少しでも気持ちのよい、快適で安全な、安らげる空間をつくりあげるためのものです。が、それらが実現するための大前提は「予算内に収まっていること」。

敢えて、直球ど真ん中に言い切ってしまえば、家づくりにおいての検討事柄とは、

1:どのような家が
2:いくらでできるのか

突き詰めると、このふたつしかありません。

「どんな家が」を予算内の「いくら」に収めることが、私たち建築士の重要な職能であるはずなのですが、その計画ごとに「世界初の試み」を必ず持ち合わせ、また、後に触れますが、プランの多様化に伴い、いわゆる坪単価などの従来のやりかただけでは、「その計画のコスト」を正確にはかることはむずかしく、これまでの修行時代での経験をふりかえっても、方法論が確立されている場面に出会うことは、残念ながらありませんでした。

ですが、独立後、これまでできなかった「逆からのアプローチ」での経験を積み重ねることで、細部の違いを金額に反映して読み込めるノウハウの(ようなもの)の道筋が見えて、おかげ様で身についているようです。

そこで今回はそのノウハウの背景、「どんな家が」と「いくら」のふたつが決まってゆく仕組みを知ってもらい、そこから遡ったプランニングを可能にするためには何が必要なのかをご紹介します。

以下の6つの項目に分けて話を進めてゆきます。

1:2014年における坪単価の効能と限界
2:家ができてゆく、そのシステム(「材料と人」編 )
3:      〃       (「お金と人」編 )
4:建設業界の商習慣の歴史と現状
5:家づくりのあたらしい動き
6:コストから逆算したプランニング

それでは、次回より本格スタートです。

明けましておめでとうございます。

年末の雪も融けて、境港は気持ちのよい晴天が続く三が日です。皆様はいかがお過ごしでしょうか?

今年も家づくり、快適な空間づくりとその過程を充実させるために必要と思われる、

・内向きに閉じない
・透明性のある
・公正な

情報発信となるよう、本ブログを綴ってゆきます。引き続きご愛顧のほど、宜しくお願い申し上げます。

渡辺浩二

建築模型(補足)

前回ブログ「台形平面の上に掛けた片流れ屋根」の補足です。

長方形の平面ならば勾配は短辺方向だけなのですが、台形であることによって斜辺部分の「流れ長さ」が異なるために長手方向にも勾配があらわれています。・・・と、わかりにく補足説明でごめんなさい。つまりこんな感じです。

写真の手前から奥、手前左手から右手に下り勾配がついています。

建物をほぼ真上から見下ろす視点のこの写真、実際にはこの位置からは鳥でなければ見えないのですが、敷地を含んだ建築計画全体のスケール感とバランスを確認するためにはけっこう大切で、ここが基本設計の最初のチェックポイントです。

ブログ更新、次回は1月3日の予定です。

それでは皆様、よいお年を(^^)/

建築模型(台形の店舗)

コンピューターグラフィックスが進歩したとはいえ、光と質感を考慮したボリューム検討にはやはり模型を作って「リアル」に眺めたほうが、少々手間はかかるものの正確な判断に繋がるようです。

この案は台形平面に片流れ屋根を掛けることで長辺短辺両方向に屋根勾配を持ちます。長辺方向の勾配が遠近感を強め、外観の程よい隠し味となることを確認できて、まずはひと安心です。

米子市内の店舗計画案です。

カーボンオフセット

前回のブログを書く際にカーボンオフセットについて調べた折、興味深いウェブサイトに出会いました。

「森林・林業学習館」という名前の、どうやら個人で運営されているサイトのようなのですが、木と木を取り巻くさまざまについて、幅広く深くそして大変わかりやすく紹介されています。木材については日頃関わっているつもりのわかったつもりになっていたのですが、拝読しながら林業の現状、木材流通の現状についてあらためて知ることが多かったです。

そのなかに木材が吸収し留める二酸化炭素の量を計算してくれるページがあって、樹種と床面積を入力すると木造住宅一棟分のおおよそのCO2量を計算することができます。試しに樹種をスギ、延べ床面積を115㎡(35坪)と入れて計算ボタンを押すと出た炭素重量は約12,000キログラムでした。これは空気量に換算すると東京ドーム16杯分の容積なのだそうです。

2010年に公布・施行された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を受け、全国各地に木造の公共建築が増えています(弊社近くではJR境線の米子空港駅と境港警察署の米子空港派出所があります)。

この流れは公共建築以外の大規模建築物にも波及しているようで、横浜では「サウスウッド」(構造設計、施工/竹中工務店)が先月完成・オープンしましたが、これは国内初の防火地域内に建つ耐火木構造の大規模商業施設で、構造体の柱・梁は木肌のままで使用されています。

環境負荷の少ない建築材料としての木材・木質材料は、これまでの用途や規模などの制約を超えて、その可能性がますます拡がっていくようです。

戦後まもなくに植林された国産のスギやヒノキが伐採期に入っていますが、ウッドマイレージ(=輸送に伴う環境負荷)の小さい地産材を用い、風合いや断熱性、比強度など木の良さを活かした気持ちのよい空間づくりに貢献できるよう、私もさらに研鑽に努めます。