言葉の力

「風を受ける面に直交する壁」って、いったいどういう壁なんだと、前回の ブログ を読んでくださった方から質問をいただきました。

「それはですね、建物を上から見たイメージで、X方向に対してのY方向の壁が・・・」

と、あらためての説明を考えてみたものの、これじゃあますますわかりにくい。うーん。

ならばと、模型にしてみました。こんなかんじです。

ウッドデッキのサンプル(手前がクマル、奥がセランガンバツ)が、A4のクリアファイルをちょうど袖壁のように支えています。A4ファイルの(写真から見て)裏側を受風面とすると、デッキサンプルがその風圧力を受け止める 「直交する壁」にあたります。

たしか足立美術館(安来市)の庭園を眺める大開口のガラスも、同じようにガラスの袖壁で補強されていたはず。構造計画というと何やら難しくて複雑そうなことをやっている印象ですが、大元をたどると単純明快で、あとは数値化されたそれぞれの要素を拾い出しての足したり掛けたり(引いたり割ったり)しての検証というのが、構造計算の正味です。

といったところで前回の補足説明となればよいのですが・・・

ともかく、言葉足らずで失礼しました。Kさん、質問どうもありがとうです。

風のちから

今年は台風が続きますね。10月にこれだけ続くのは歴代タイ記録だそうです。

今回は建物と風について、我が身の復習を兼ねて以下、記してみます。しばらくおつきあいください。

ニュースなどで台風の勢力をあらわすとき、

「最大風速」(10分間の平均値)と、
「最大瞬間風速」(3秒間の平均値)と、

風速をふた通りに分けて呼んでいますが、建築基準法にて想定する風の強さは「最大風速」(10分間の平均値)のほうで、地域により30~46m/秒の範囲で定められています。

境港は30m/秒の地域にあたり、気象庁のホームページをみると境港の観測史上の最大値は、最大風速が19.5m/秒、最大瞬間が42.0m/秒で、ともに1991年の19号台風で計測されたものでした。

秒速30mは、時速に計算しなおすと108kmに相当します。このときの風圧力は大雑把に計算すると約54kg/㎡です。風を受ける面が10㎡に拡がると540kg、2階建て40坪程度の住宅の外壁一面を50㎡と仮定すると、その力は2.7t にもなります。

このほかに建物の形状と高さ、周囲の建物の有無などを考慮したものが構造計画時に求められる風圧力で、一般的な木造住宅の場合、風を受ける面に直交する壁で構造を支える考え方がその強さの根拠となります。

空気の密度は水の1000kg/立米に対して1.2kg/立米と非常に小さく、普段その存在をあまり意識することはないのですが、規模と力を持つと風力発電のようなエネルギーの源となる反面、私たちの生活を脅かす脅威ともなるのだと、雨や竜巻、台風が続くこの季節にあらためて思い直しています。

台風27号は進路が東に振れたようで、砂地で平地の境港はこれから雨降りが続くのみのようですが、強風・暴風域の方々、川沿いや山あいにお住まいの方々には、引き続きどうぞご注意なさってください。

鴻池の犬

遠方の現場に向かうとき、移動中のクルマのなかで音楽を聴きながらということが多かったのですが、音楽ばかりでもアレなので、落語も聴くようになりました。

桂枝雀さんが好きで、「代書」などの始終大爆笑のネタ( 信号待ちでゲラゲラ笑っているところをなんだこいつはと不審そうに覗かれたりもあったり )はもちろんですが、いわゆる人情ものも好きです。なかでもこの「鴻池の犬」は、もっとも好きなおはなしのひとつです。

子供の頃に離れ離れになった(犬の)兄弟のお話で、再会と弟くんの回想シーンも好きなのですが、前半部分の「だんさん」の矜持というか節度というか、背筋のとおった佇まいには、何度聴いてもそのカッコよさに惚れ惚れします。

CDにもうひとつ入っている「くしゃみ講釈」は、大爆笑必至のネタです。要信号待ち注意。

とっとり緑化フェア

昨日は気持ちのよい青空の境港でしたが、調べてみると10~11月の晴れの特異日は、実は11月3日だけなのだそうです。

東京オリンピックは記憶にないのですが、10月10日と晴天の運動会をセットにして記憶に刷り込まれている世代としては、なんだか肩透かしをくらった感じです。

鳥取市で開催中の 「とっとり緑化フェア」 に行ってきました。この日も特異日ではありませんでしたが、秋のおだやかな空でした。

渋滞緩和のための自家用車専用の臨時駐車場に車を置いてから、シャトルバスで5分ほど揺られると、会場の湖山池公園に到着です。花トリピーの出迎えをうけたあと、フードコートを抜けて橋を渡った先は、ナチュラルガーデンからはじまるさまざまな庭と緑がひろがります。

会場に沿った湖山池からの風が、順路に沿って歩くほどに汗ばむ身体にここちよくて、歩きながら眺め、足を止めて眺めて、また歩いて休憩してを繰り返しながら、あっというまの半日でした。脳ミソの「凝り」がほぐれて、身軽になれたような感じでもあります。

建物における植物のちから、というとおおげさですが、植栽の有り無しでその建物の居心地がおおきく違ってくるものだなあとの思いは、経験をかさねるほどに強くなっています。

視線の先の緑は気持ちを落ち着けてくれて、虫や鳥たちを呼び寄せて、わたしたちはきっと、人間以外の生き物をどこか近くに感じていたいのかもしれません。そして、そうしたいほどに最近の暮らしをとりまくテクノロジー、あるいは根本的なものの考え方は、あまりにも 「腕ずく」 過ぎるようにも感じます。まだまだできることはあるはずだと、それらの言葉はそのまま我が身に返ってもきます。

不勉強の賜物か、植えられている半分の名前もわからなかったのですが、それでもゆっくりと色と香りを楽しむことができました。また壁面や屋根の緑化についての具体的な取り組みや、地元の造園業者さんによるこれからの庭づくりの出展など、これからの設計を考えるうえで参考になることも多かったです。

残念ながらアザラシの「コヤちゃん」には会えませんでしたが、とてもよい休日になりました。

ここでの月見、きれいでしょうねえ。

竜巻に備えて

いくらか雲は浮かぶけれど、境港はきもちのよい秋晴れの空です。けれど台風の影響なのか、明日の午後からは雨模様の予報です。

「ねえワタナベ君、竜巻に強い家ってどんな家?」

先日、友人にたずねられました。
この前みたワイドショーのなか、竜巻の話題に併せて、

「これからの家には竜巻に対する備えも必要ですね」
とのコメントが添えられていたらしく、それを受けての問いでした。

恥ずかしながら竜巻について、私の認識はこれまでのニュースで見た程度だったので、これを機に、どのような備えが必要なんだろうとまずは調べてみたのですが、その勢力、破壊力は想像を遥かに超えるのものでした。

具体的には、

先月の埼玉越谷の被害状況から推定される竜巻の最大風速は50m/秒~69m/秒、これまでの国内最大級といわれた、昨年のつくば市では70m/秒~92m/秒でした。

対して建築基準法で想定している台風などの最大風速は、厳密には値の計測平均が異なるので、単純な比較はできないのですが、地域により30m/秒~46m/秒の範囲です。

当初は何か効果的な補強や改修方法があるのではと思っていたのですが、この勢力の大きさです。調べるほどにわかったのですが、現実的に竜巻による被害を完全にシャットアウトできる構造物は、今のところどうやら地下室やシェルター(市販されてはいますが)くらいしか存在しません。

鉄筋コンクリート造ならば、鉄骨造や木造のように建物が吹き飛ばされる心配はなく 「より安全」 ではあるものの、割れて筒抜けのガラス窓からの飛来物など、充分すぎるくらいの注意が必要のようです。

調べながら、現在もっとも効果的な竜巻に対する備えとは何かと考えたのですが、それは、

・避難場所をあらかじめ決めておくことや、
・身を守るための行動を整理しておくことなど、

どちらかといえばハード面よりもソフト面に関する備えなのではないか、と思い至っています。

気象庁発行のリーフレット「竜巻から身を守る~竜巻注意情報~」 には、屋外、屋内での竜巻からの身の守りかたについて、具体的に記されています。ぜひ、ご一読をお薦めします。

余談ですが、万一避難のタイミングが遅れたときの緊急避難用ピットを家のなかに設ける方法は、実際の避難を想像したとき、相応に有効なのではないかと考えています。実施には多方面の検討が必要でしょうが、2~3アイディアもあるので、これを機に継続して取り組んでみようと思っています。

なんだか不安を煽るばかりになったかもしれずで、申し訳ありません。実際に竜巻にピンポイントで遭遇することは、確率としてはかなり低い部類に入るようです。

ですが、国土技術政策総合研究所による、つくば市での竜巻被害の報告書  を読むと、せめてもしものときにどう行動すべきかくらいは考えておかねばと素直に思いました。

さしあたって私は、自宅にいるときの緊急避難場所を決めました。