竣工(Mマンション)

「Mマンション」は先日、リノベーション工事が完了しました。

今回は、これまでとは異なる色調・質感の素材を使うことで、よりメリハリのきいた室内意匠を目指しました。 電気、空調、給排水設備については、一部を再利用しながら大部分を一新して、令和の時代に見合った設備環境としています。

幸いなことに資材等の納品時期については、一時期のような混乱はなかったのですが、仕上げ材の色調変更に伴う各種工程の組み換えなど、専門工事業者の皆さんには(例によって^^)積極的なご提案などと併せてご尽力いただき、また、再利用品の保管についても大変助かりました。

加えて、資材の搬入経路が生活動線と重なってしまうなかで、マンション入居者の皆様には様々な場面でご協力を賜りました。ご高配にあらためてこの場をお借りして御礼申し上げます。

そしてオーナー(クライアント)様、今回もお声掛けいただきありがとうございました。

木造建築物の防耐火設計

諸事情により今年の夏 、木造建築物の最新の防耐火設計について、詳しく学ぶ機会に恵まれました。

具体的には、法令集や上の写真の「木造建築物の防・耐火マニュアル」などを手引書として、主に木造準耐火建築物のケーススタディを繰り返しながら、計画概要の検証からディテールの掘り下げまでをおこないました。

今回はそこで得た、「学びのお裾分け」をします。

木材は、一般的には「燃えやすい」と思われがちですが、 実際には、炭化層が表面に形成されることによって、内部へ燃え進みにくい特性を持つことが、実験で確かめられています。

この特性を活かし、柱梁など主要構造部の「石膏ボードなどの不燃材料による被覆」と、「被覆材相当の断面寸法を加えた『木材あらわし』」を適材適所に組み合わせることで、 必要な防耐火性能を満たしつつ、木材の持つ高コストパフォーマンスと意匠性、さらに言えば環境負荷低減の効果を存分に発揮した建物を計画することができます。

実例もこの10年ほどの間に、学校や体育施設や道の駅などの公共施設、商業施設や事務所ビルなど、「質実剛健からシンボリックまで」の振れ幅で、少しずつその数を増やしています。

そして現在では、このような構造で一般的な規模・用途のもの、たとえば3階建ての共同住宅や床面積3000㎡までの店舗等の特殊建築物、または準防火地域内の床面積1500㎡までの事務所ビルや診療所、戸建住宅等であれば、(スーパーゼネコンさんではない)私たち市井の建築士や地域の工務店・建設会社さんが、それぞれに蓄積している「木造でのノウハウ」を活かしながら実施できるほどに、後方支援する法令や告示、研修制度等の環境整備が予想以上に進んでいます。

ここからは余談です。

冒頭に書いた「諸事情」とは、二級建築士試験の課題対策でした。

本年度の二次(設計製図)試験の課題は「木構造の保育所」でした。保育所は児童福祉法により、室の配置に応じて必要な防耐火性能を求められる、特殊建築物です。

以前、当ブログのどこかでお話ししたように、資格学校の製図試験対策講座を担当している関係上、課題に関連する法令を含む計画全般について、毎年ひと通りの整理を済ませてから講義に臨むのですが、本年は図らずも、最新の、木造建築物の防耐火設計の設計自由度とその可能性について、深く学ぶ機会に恵まれました。

試験は9月中旬の二次試験を経て、いよいよ来週が合格発表です。受講生の皆さん、そして試験に向けて精一杯の準備で臨み挑んだ受験生全員に、それぞれよい結果が訪れますように^^/

排水管の「○○詰まり」

今年の春にご紹介した事例は、「水分を求めた木の根が排水管の中に進入して、流れを堰き止めた」というなかなかのレアケースだったのですが、今回の事例については、どうやら「無いことは無い」くらいには起こり得るようです。

竣工から数年(5~10年)が経過したクライアント様から先日、キッチンの排水が流れなくなった、と連絡をいただきました。状況をひと通り伺ってから、まずはトラップ(シンクと排水管との間にある「関所」)の洗浄をお願いしたのですが、残念ながら改善されませんでした。

給排水工事を担当したT社S社長に相談すると、「『キッチン接続部分から集水桝まで』の間で排水管が詰まっていて、おそらく油脂によるものだろう」とのことで、翌日現地で不具合箇所の確認をおこない、

早速そのまま対処してもらうことになったのが上の一連の写真です。 作業はまず、トラップを取り外して露出した排水管に、清掃用のノズルを差し込み、

管内の汚れを集水桝に向けて掻き出します(注:写真の一部をモザイク加工しています)。この作業を数回繰り返してから、

トラップを繋ぎ直してシンクに水を張り、充分に貯まったところで一気に流すと、

残った管内の汚れも全て流れ出て、詰まりは無事解消しました。

S社長によると、トラップが「節水仕様」になっているキッチン(最近のものに多いそうです)は排水管内の水流が弱く、例えば、揚げ物などの鍋や食器を洗った際、排水中の脂分が流れ切らずに管内に付着して、それが蓄積すると、今回のように管が詰まってしまうことがあるのだそうです。

対処方法としては、一日の水仕事の終わりに、バケツ一杯程度の水をシンクから流してやると、水流によって、排水管内のその日の油脂などを洗い流し、詰まり防止に効果があるとのことです。そのほか、洗濯機や浴室の排水の不具合については、髪の毛などが原因となることが多いようです。

建具レール

Mマンションは現在、仕上げ工事が進んでいますが、

今回は、そこから少し遡って、引戸レールの仕様決めの様子をご紹介します。

弊社が引戸レールの「定番」として用いている積層強化木の木製レールは、無垢材の床板との相性はとてもよいのですが、今回床板に使用する、塗装済みの建材製品とでは、素材感の違いが主な要因なのでしょうが、なんというか、お互いがお互いの良さを引き出せません。

そこで、あらためて候補を選び直して現場に持ち込み、再検討した結果、 (上の写真の)アルミ製Vレール ならば、やや硬質な風合いの床板との相性もよく、本計画の室内イメージに沿ったものになりそうです。

レールの色は、白系の床板を引き締めるマットシルバーです。レール取付は、現在進んでいる仕上工事の後、建具工事の際におこないます。

測ってみたら

おそらく同業他社のみなさんと同じように、日々の設計業務は、そのほとんどが紙と鉛筆を用いない、パソコンによる作業となっています。とはいえ元々は機械(パソコン)を介するぶん、手書きの製図にくらべて確実に余計なひと手間を要して「もどかしかった」はずなのですが、作業場所を選ばず図面の保管スペースも必要ない、総合的な使い勝手のよさが勝って現在の姿に落ち着いたようです。ここのところの定番となった現場での詳細図書きも、ノートパソコンなしには成り立ちません。

また、情報伝達についてはそこからもう一歩進化していて、そうして書いた図面等のデータは、電子メール経由で工事関係者の手許(スマートフォン)に共有できるようにもなっています。 そういえばここのところ、現場での打ち合わせにタブレット持参で来られるメーカーさんも多くなりました。

と、 前置きが長くなってしまいましたが、こうした私の日常業務「以外」のところでも、どうやら世の中では同じように、というかそれ以上に便利になっているようで、今回はそうしたなかで受けた恩恵について書きます。

先日、 0.1グラム単位で材料を計測しなければならなくなり、身の回りにある計測機器を引っ張り出した結果、最小単位は、自宅にあった料理用の秤の「1グラム」でした。

これは、どうにもならない場合は近所の境高校に駆け込んで、理科実験用の天秤を貸してもらおうか(一応OBなので)などと考えながら、まずはホームセンターに向かってみたのですが、品ぞろえのなかには0.1グラム単位対応の秤(料理用に用いるものを「クッキングスケール」と呼ぶのだそうです)も各種あって、問題は10分程であっさりと解決してしまいました^^;

そのなかから価格がお手頃なものを選んで事務所に戻り、いざ計測に臨んだのが上の写真です。おかげさまで無事0.1グラム単位の計測にも成功して、必要な分量を小分けにすることができました。妙な表現かもしれませんが、計測する粉末の、僅か数粒の違いで表示グラム数が変化する様子は、驚きを通り超えて畏敬の念すら抱けるほどで、更に言えば、粉末の下に敷いたフィルムの重さをあらかじめ除いて計測できたりと、高精度に加えて至れり尽くせりでした。

機能や使い勝手は現状更新を続けて絶えず進歩して、世の中は知らない間にどんどん便利になっているのですねえ。