竣工( Mマンションリノベーション )

「Mマンション」は先日、リノベーション工事 が完了しました。

今回の5期工事は、これまでの1~4期に比べると平面(間取り)が若干異なり、床下給排水管のルート確定と点検口設置にひと工夫を要しましたが、電気、空調とあわせた更新により、令和の時代に見合った設備環境となっています。

建物の構造上、どうしても「表し」となってしまう、エアコン用の電線については、室内の仕上がりを損なうことがないような配線位置やカバー材選定を、また、内部建具の開き勝手と戸当たりの再検討、あるいは衛生機器についていえば配管接続部のディテールについてなど、(例によって^^)専門工事業者の皆さんには、積極的な提案とともにご尽力いただきました。

今回は1階であったため、資材搬入と産廃搬出について、これまでのような階段の上り下りの負担がなく、工事関係者一同とても助かったのですが、とはいえ経路自体は生活動線と重なってしまうなかで、マンション入居者の皆様には様々な場面でご協力を賜りました。ご高配にあらためてこの場をお借りして御礼申し上げます。

そしてオーナー様、今回もお声掛けいただきありがとうございました。

「山陰の気象条件に沿った」家づくり 番外編 1

少し前に当ブログにて、

「雨降りの日が比較的多い地域である、山陰地方に暮らす私たちにとって、買い物帰りの車から家の中に入るまでの、人と荷物が雨(や雪)に濡れない工夫は、整えると重宝する、大切な機能のひとつなのかもしれません」

と、申しあげた記事 を掲載しました。

では実際にどのような工夫が出来るのだろうかと、その後いろいろ検討案を拵えてみたのですが、今回はそのなかの「濡れない平屋案」の模型を紹介させてください。

上の写真は、前面道路が付く、建物西側を捉えたものです。写真の左手、建物の北西に部分的に見える、屋根と柱で囲まれた空間が、屋根つきの駐車スペースです。

駐車スペース奥の勝手口ドアを開けると、そこから収納庫、パントリーを経由して、建物中央に位置するキッチンに繋がります。この経路以外のルートについては当初、雨天時に濡れないで移動することは想定していなかったのですが、

模型づくりの過程で、玄関の屋根の、軒とケラバの寸法を大きく取ることで、駐車スペースから玄関(と、その奥に設けた納戸)への経路も「濡れない動線」として充分効果的に使えることがわかり、設計変更しています。

こちらの写真は(「買い物からの、濡れない動線」でありませんが)、建物南・東側です。

写真正面(敷地南側)の主庭に対して、写真右手奥(東側)のスペースは、洗濯物干しから夏の夜の線香花火まで、前面道路からの視線を気にせずに使える、プライベートな家族のための庭、として計画しました。ウッドデッキには、先述の動線同様、雨に濡れないように、上部に屋根を架けています。

完成した模型をぐるりとながめながら、あらためて考えてみると、上に挙げた「濡れない動線」の整備は、室内ではないけれども完全な屋外でもないエリア、いわば「半屋外」の空間を充実させる工夫のひとつなのだな、と言えそうです。

建物をこのような半屋外の空間で包むことは、日々の利便性が増したり、プライベートな空間で寛げるなど一見、ソフト面の充実についてフォーカスされがちですが、そこから少しピントをずらして眺めた先にハード面、具体的にいうと建物への環境負荷低減(つまり省エネ)に対する効果も浮かび上がってきます。

伸縮門扉の「落とし錠」

上の写真は、2017年 に設置した、駐車場の伸縮門扉です。

先日クライアント様より、「門扉固定用の落とし錠の開閉(バーの抜き差し)が固く、外れなくなったところがある」とのお電話をいただき、現状確認にうかがったところ・・

6か所ある落とし錠のうち、両端(外側)のバーが2本とも、上の写真のように曲がっていました。

確かな原因はわからなかったのですが、おそらく、落とし錠が施錠された(=バーが孔の中に入った)状態で、数日前の強風の、駐車場から道路、つまり上の写真の「右から左」の方向に吹いたものを門扉が受け、テコの原理も加わって、その風圧力でバーが曲がってしまったようです。早速、持参した工具で曲がった箇所の修復を試みたのですが、バーの抜き差しはなんとかできるようになったものの、元通りの「直線」に戻すことは難しいようでした。

製造元に問い合わせてみたところ、この落とし錠は、同じ仕様が現在も継続しているようで、クライアント様と相談の上、曲がってしまった2か所について、あたらしいバーを取り寄せて交換することとなりました。

後日、部品が揃ったところで、曲がっているバーを取り外し、

新しいバーを取り付け、

門扉の開閉と中央部の施錠、落とし錠の開閉(バーの抜き差し)に問題がないことを確認して、作業は無事完了しました。

給排水設備工事(Mマンションリノベーション)

上の写真は、大人が童心に帰ってクマのプーさんになりきってみたところ、ではなくて、給排水設備業者さんが集合住宅の主管(各戸を各階縦方向に貫く管)と分岐管(主管の給排水を各戸へ繋ぐ管)の接続部を確認している様子です。現在、Mマンションリノベーションの、5期工事が進行中です。

今回は、これまでの1~4期に比べると平面(間取り)が若干異なります。

具体的に言えば、室内の水まわり各室(厨房、洗面洗濯、浴室など)が、配管計画上、最短距離をとりづらい位置関係となっていて、加えて、新設する給水・給湯管を現在の標準仕様である「さや管ヘッダー工法」とするために、どうしても室内を巡るそれぞれの配管の総長さが、これまで(1~4期)に比べ、長くなってしまいます(念のために申し添えますが、そのことで使用上・機能上の問題はありません)。

建物の構造上、床下高さ(深さ)があまりなく、加えて「床を支える柱状の部材」である床束(ゆか – つか)の間隔を広く取れない、配管スペースに余裕がない状況での「いつもより管多め」となる今回の配管工事では、その準備工程でおこなう「(床当該部の施工図をたたき台にした)床束の配置と配管ルートの擦り合わせ」を、これまで以上に綿密におこなってから作業に取り掛かってもらいました。

また、給水・給湯ヘッダーは、その上にくる床下点検口の、「歩行者の足に触れにくい、人通りの少ない場所に設置する」原則を踏まえて、厨房の奥に計画しています。

点検口と言えば今回は、排水管の距離も長くなるため、メンテナンス用の点検口(上の写真の、右下に見える「グレーの丸」)を設けています。

(山陰の)気象条件に沿った家づくり 後編

前回のブログ(前編)のように、気象庁の、国内主要都市の降水量データを閲覧して比較したところ、どうやら山陰地方は「弁当忘れても傘忘れるな」の言葉の通り、雨がよく降る地域であると言えそうで、日本海に面する北陸・東北地方についても、ほぼ山陰と同じくらいの雨が降るようです。

折角なのでもう少し深堀りしてみようと、国内で「雨がかなり降る」と言われる尾鷲市(三重県)、新宮市(和歌山県)、室戸市(高知県)についても同様に、2000年から2022年までのそれぞれの年の年間降水量を拾い出し、表計算ソフトに入れて平均値を出してみました。今回の後編では、まずはその値をご紹介します。

尾鷲観測所(尾鷲市)   4,017ミリ(境観測所より△2,119ミリ)
新宮観測所(新宮市)   3,453ミリ(  同   △1,555ミリ)
室戸岬観測所(室戸市) 2,542ミリ(  同   △ 644ミリ)

といったように、いずれの数値も境観測所(境港、山陰)を上回るもので、尾鷲に至ってはダブルスコアです。一旦は「雨降りの勝ち組」を誇ろうとしていた、境港市民である私の鼻っ柱は、この結果にものの見事にへし折られてしまいました。上には上がいるというのか、日本は広いです。そして長い。

この後、日本の広さと長さを思い知らされた一方で、これほどまでに雨が多い地域では、他とは異なる建物の特徴があるのではないかとも思い、上の各市の市街地をグーグルマップで散策してみました。そこでわかったのですが、室戸市では、一般住宅のビルトインガレージの割合が建物の新旧を問わず驚くほど多く、そしてそのほとんどがシャッター付きでした。おそらく、台風の針路に重なることが多いという理由も相まってのことでしょうが、気象条件に沿った建築のありようについて、あらためて実例から教えられたようでした。

・・・前置きが(とても)長くなってごめんなさい。ここからが今回の本題です。

このように、日本国内のさまざまな気象条件と、その条件に沿った住宅(建築物)のありように触れた経験は、翻って「比較的雨がよく降る」山陰での家づくりにおいて、どのような建築的工夫が効果的なのだろうかと、あらためて考えるきっかけになりました。

不相応なコスト増を招かずに実現可能なもの、とあらかじめ「縛り」を設けたうえで、考えてみたのですが、真っ先に頭に浮かんだのは、「雨(や雪)の日の買い出しの荷物を、濡れずに車から室内に持ち込むことができる、動線の整備」でした。

弊社ではこれまでの事例で、室内と室外の中間領域等として、リビングに繋がるウッドデッキ、あるいは玄関・勝手口に屋根を架ける手法をよく用いていますが、これをもう一歩進めた「濡れない動線の確保と、納める物の内容に応じた、動線上の収納計画」と、そして折角なのでさらにもうひと手間加えて、その各所の適切な断熱レベルの選択までを基本設計のなかに取り込むと、使い勝手とサービスヤードの質、そして本質的な省エネ(エネルギー消費量を減らすこと)にどれほどの影響をおよぼすのか、よい機会なので、いろいろ作って検討しています。