「個別で具体的な」耐震性の検証(後編:その2)

前回、柱頭・柱脚の金物を取り外した建物モデルを、「極めて稀な地震」の1.5倍の力で揺らした結果、

倒壊したのが、上の動画です。倒壊というよりはむしろ「崩壊」と呼んだほうが近いかもしれません。

今回は、このモデルをどのように修正すると、倒壊(崩壊)を防ぐことができるのか、その対策についてご紹介しながら、耐震性能確保のために必要な事柄を整理してゆきます。

まずは、ここまで(①壁量不足に対して、②壁の偏芯に対して、③火打ち・屋根構面がないモデルに対して)の修正方法に倣い、構造体の「壁を増やして」みます。具体的には、すべての壁に片掛け筋交い(断面45mm*90mm、いわゆる「壁倍率2.0倍」)を追加しました。

それでは早速、揺らしてみましょう。

地震力(「極めて稀な地震」の成分は X、Y方向の、水平力のみです)に応答する、建物モデルの「揺れ幅」は、前回に比べて小さくなりました。が、シミュレーション終盤に、柱脚部分が土台から外れたことを呼び水にして一気に崩れ、倒れてしまいました。

では次に、壁を「更に増やして」みます。具体的に言えば、先程の壁に筋交いをもう一本追加した「両筋交い(壁倍率4.0倍)」の状態で、再度揺らします。

すると、

序盤での建物の揺れ幅、変形量は更に小さくなったものの、今回は、X方向は柱頭部分が、Y方向は柱脚部分がそれぞれ梁・土台から外れたことをきっかけにして、一気に崩れて倒れました。崩壊の度合いは更に増したようで、強く、固くなったものの、逆に粘り強さを失い、脆い構造となってしまった印象です。

このような脆い倒壊(崩壊)は、主に壁が地震力(水平力)に抵抗する際、柱に生じる引抜きの力よって起こります。そして、このような崩壊がおこらないよう、現行の建築基準法(2000年改正)では、柱の柱頭・柱脚部をそれぞれの引抜力に応じて適切に緊結するよう、基準が定められています。

では、上のモデルを現行の建築基準法に適合、つまり柱頭・柱脚に金物を「取り付け直した」状態で、再度揺らしてみます。

柱に生じる引抜力を柱頭・柱脚の金物が抑えて柱の外れを防ぎ、壁本来の強さを活かし切ったこのモデルは、倒壊を防ぐことができました。

ですが、そもそもの話、初回(5月31日のブログ) でのシミュレーションのように、筋交いによる補強がない場合でも、柱の柱頭・柱脚、さらに言えば、各部材の接合部が適切であれば、「極めて稀な地震」の1.5倍の力に対して、倒壊することはありません。

加えて言えば、次の動画は、筋交い補強のモデルと無補強モデル(Y方向)を並べたものですが、

「両筋交い補強」モデルの挙動に注目すると、その他の小壁(補強なし)が相対的に「弱く」なってしまったことで、却って揺れ幅、変位が著しくなっています。このことから、壁の配置決定には、「強さのバランス」も加味しなければならないことが分かります。

ではここで「柱頭・柱脚部分の金物を取り外したモデル」の修正方法について、結論を述べます。

壁、または小壁や水平構面の設計値を発揮するためには、部材間の接合部の強度が保たれていることが大前提です。故に、「柱頭・柱脚に金物がない」ケースでの修正方法はズバリ、

「適切に金物を取り付ける」

です^^;

「個別で具体的な」耐震性の検証(前編・中編・後編)を通して、ここまでに「見えた」ことを6項目に整理します。

1:壁(小壁)の量を一定量確保してください
2:壁(小壁)は、バランスよく配置しましょう
3:バランスは、壁(小壁)の増量で、ある程度補うことができます
4:屋根や火打、中間階の床等の水平構面についても考慮しましょう
5:水平構面も壁量と壁バランスで、ある程度補うことができます
6:部材接合部は必要な強さを確保しましょう(これは必須です)

そしてこの6つに、「構造部材が腐朽しないような措置、より具体的に言い換えれば、堅実な『雨仕舞い』のディテールに基づいた設計・監理をおこなうこと」を加えた計7項目が、耐震性能の高い構造を成り立たせるための原則論、大切な基本事項です。

実は、この原則論・基本事項には、続編である「応用・実践編」が存在します。

折角なので次回を「延長戦」と銘打って、その応用・実践編について、少しだけ述べさせてください。内容を掻い摘んで言うと、それは、上の6つの原則論に目を通した際に浮かぶ、以下の疑問、

「木造軸組工法の耐震性能において、壁量とともに、接合部がとても重要であることは、なるほどよくわかった。けれど、これから新築する住宅や、部材接合部の法令が整えられた2000年(平成12年)以降に建てられた住宅はともかく、それ以前の住宅を耐震改修する際、接合部の補強や接合金物の設置が構造上、納まり上、予算上等で困難な場合は、いったいどうすればよいのか?」

に対するご回答です(11月29日(金)の更新予定です)。