wallstat はじめました。

5月に入って好天が続き、暑いほどになりましたね。しばらく更新が空いてしまいました。申し訳ありません。

今回は、木造軸組工法の数値解析ソフトウェアである、wallstat(ウォールスタット)のご紹介と、wallstat の弊社業務への活用について、お知らせします。

wallstat は、

「パソコン上で建物を3次元的にモデル化し、過去に起きた地震や想定される巨大地震など、様々な地震動を与え、木造住宅の地震による揺れを動画で確認(見える化)することができるソフトウェア」(「(一社)耐震性能見える化協会」様HPより抜粋」)です。木質構造の研究者、技術者を対象に、現在WEB 上で無償公開されています。

「見える化」された、木造住宅の地震による揺れは、

ご覧のようなCG動画(これは2005年に公開された実大振動台実験を再現したものです)で確認することができます。

このように、「個別の具体的な」建物を「個別の具体的な」地震波によって揺らすことで、個別で具体的な建物の挙動、例えば各階それぞれの、壁の変形量はどのように異なるのか、あるいは柱にかかる引き抜き力はどこが最大になるのかなど、各部分の詳細ひとつひとつが明らかにされます。そしてそれら詳細のひとつひとつは、建物に本当に必要な、言い換えれば「適切な」構造強さを実現するための大切な拠り所となります。

上記見える化協会様のHPにもあるように wallstat は、2010年の公開からバージョンアップを繰り返し、現在「バージョン5.1.12」です。さらに暮らしやすい世の中の実現を目指し、改正を繰り返す建築基準法などの各法令と同様、このソフトウェアも「最新鋭であるけれども、究極には途上」の状態を保ちながら、これからもさらなる更新が進められるようです。

実際の建物を人工地震で揺らして挙動を確かめる、振動台での実大実験と同等の検証をパソコン上でおこなえること、そしてその検証を踏まえた改善、再度の検証、さらに再度の改善・・・といった繰り返しをパソコン上で何度でもおこなえることは、地震に強い住宅、建築物の実現に向けて、私たち実務者にとって、これまでよりも一段高いレベルの設計・監理を実現できる強力な武器となります。

そして、建物の揺れを具体的・詳細なCG動画で検証(見える化)できることは、クライアント様など一般の方々からの「なぜそこに壁・柱が必要なのか?」などの質問に対して、構造上の意図をご説明する際のツールとして理想的です。

以上のことから弊社では、自社の設計・監理業務において、wallstat を最大限活用することにしました。

折角なので、モデル化したプランをwallstat で「揺らしてみた」様子について、その動画を次回のブログでご紹介します(5月17日更新予定です)。

2025年の「建築基準法 改正」

前回のブログ でも触れましたが、小規模木造建築物においての最新・現行の耐震基準は「2000年基準」です。そしてこの基準は、来年の建築基準法改正(正確には、2022年に改正されたものを2025年から施行)を受けて、アップデートが予定されています。

大掴みに言うと、建物重量の算定や柱断面、耐力壁(準耐力壁)などの項目について、これまでに比べてより個別の事例に沿った、詳細な検討ができるように変更されています。また、耐震改修工事を伴うリフォーム・リノベーション工事についても、平屋建ての一部を除き、新築工事と同じように、着工前に確認済みを受けることが必須となります。

新耐震基準は、「最新」ではありません

長文となったので、まずは今回のブログで「最もお伝えしたいこと」を抜き書きします。

大掴みに、そして無用な混乱を防ぐ意図で言うと、木造住宅については、「新耐震基準(1981年)」は、最新の基準ではありません。 最新・現行の基準は、「2000年基準(2000年)」です。住いの耐震性について不安に感じられる方には、公的助成を利用した耐震診断をお勧めします。

以下、本文です。

1月1日に発生した、令和6年能登半島地震は、日毎にその被害の大きさを知ることとなっています。また、報道の隙間から零れ、現地でなければうかがい知ることができない過酷な状況は、私(たち)の想像を遥かに超えるものだということは、辛うじて想像できます。どうか一人でも多くの方々の身の安全が保たれて、被災された皆様、救助・復旧に携われている皆様が、どうか安全に過ごされるよう、祈るばかりです。

私たち人間が、いまのところ自然災害を100%解明できていない以上、「建築」に関わる者の全ては、謙虚な姿勢でものづくりに臨み、それと同時に、いたずらに不安を煽る(ことになるかもしれない)物言いや振る舞いには、殊更に注意深くあるべきだと私は考えます。

1月7日に配信された下記リンクの記事について、差し出がましいかもしれませんが、少しだけ補足説明をさせてください。

「新耐震基準」導入後に新築・改築でも半数の木造家屋が「全壊」に…石川・珠洲の現地調査 (msn.com)

は、その見出しと記事の内容について、厳密には「嘘は書かれていない」のですが、新耐震基準、といった専門用語について、その実態が冒頭の抜き書き、「新耐震は<最新>ではない」ことをご存じないであろう一般の方々に対しては、やや不親切でした。もう少し踏み込んで言えば、この記事は、場合によっては一般の方々に対して

「去年家を新築したけど、ウチも地震で全壊してしまうのか?」
「実家を耐震リフォームしようと思っていたけど、やっても意味がないのか?」

などの誤解を招きかねないものでした。

実際に、弊社にこの記事に対しての(上の誤解のような)お問い合わせが届いたのですが、その際、この記事が、おそらくの本意であろうと思われる、「今回の地震で全半壊を免れた、新耐震基準の家(1981年6月1日~2000年5月31日)に現在もお住いの方々への、余震への緊急の注意喚起」とは伝わらず、ミスリードの記事として読めてしまう可能性に対して、何かしらの補足が必要だと感じました。

という訳で以下、冒頭で抜き書きしたものの繰り返しになりますが、補足説明をします。

大掴みに、そして無用な混乱を防ぐ意図で言うと、1978年の宮城県沖地震の被害から学び、1981年の法改正で設けられた「新耐震基準」ですが、木造住宅に代表される、小規模・低層の木造建築物については、最新の基準ではありません。

最新・現行の基準は、1995年の阪神淡路大震災の被害から学び、2000年の法改正で設けられた、「2000年基準」と呼ばれるもので、新築はもちろん、耐震診断・耐震改修工事においての基準にもなっています。

このブログを書く際、鳥取県の耐震助成事業について調べ直してみたのですが、以前は対象外だった、新耐震基準の住宅(1981年6月1日~2000年5月31日)についても、耐震診断・耐震改修工事をおこなう際の助成を受けられるよう、改正されていました。これまでは、新耐震以前の住宅(~1981年5月31日)だけが対象でした。

住宅・建築物の耐震化(鳥取県震災に強いまちづくり促進事業)/とりネット/鳥取県公式サイト (tottori.lg.jp)

鳥取県「以外」の各都道府県において、対象となる住宅が「どの年代までなのか?」について、その全てを把握できていませんが、耐震化への助成自体は、全ての都道府県に整えられています。お住いの耐震性について、少しでも不安に感じられる方は、助成金を活用して耐震診断を受けられることを、強くお勧めします。

明けましておめでとうございます。

あたらしい一年がはじまりました。

本年も、地に足のついた住まいづくりをクライアント様、職方の皆さんなど、プロジェクトに関わる一同で進めてゆきます。安心して心地よく、住み続けることのできる家づくりを念頭に、引き続き精進を重ねて参ります。

皆様には変わらぬご愛顧のほど、何卒宜しくお願い申し上げます。

2024年1月1日

渡辺浩二

年末のご挨拶

今年も、残すところあと僅かになりました。冬至である今日は、ご存じのように一年で最も「陽の短い」一日で、明日からは少しずつ(さっき計算したら、およそ一日に1分)、日の出・日の入りが延びてゆきます。お正月の朝に「なんだか、夜が明けるのが早くなったなあ」とほぼ毎年、同じ言葉を繰り返しているのですが、素直に毎年うれしいのです^^

コロナ禍のはじまりから3年強を経て、普段の外出先のそこここでも、顔全体が見え、表情がよくわかる人の割合がずいぶんと増えて、日常が少しずつ以前のそれに近づいていることを感じます。とはいえ、報道から流れてくる世界各地の様子からは、特に、人間とウイルスの戦い「ではないほうの諍い」についてはご存じのとおりで、昨年の今頃に比べても、さらに簡単ではない状況になっているようです。

そうした不安定な世界情勢も影響しているのでしょうか、今年、普段使いのあらゆる物の値段が上がり続けたのもご存じのとおりなのですが、建設業界においても建築資材の価格は、このところ落ち着いてはきたものの、依然として上昇傾向にあります。

こうした傾向のなかで、「求められる家づくり」をこれからどのようにして実現してゆくのか、その問いには特効薬などはなく、時間を(敵ではなく)味方にして、本当に必要なこと・ものを見極めてゆく工夫の先にしか、正解は見いだせないようです。

ここ数年とは少し異なる兆しがみえた今年も、おかげさまで健康で、現場での事故も無く、無事に一年を送ることができました。家づくりに関して、そして建築全般について、皆様にお知らせしたい話題を可能な限り当ブログでお伝えできるよう、引き続き精進してまいります。最新の話題とともに、時折の「お蔵出し」(在庫はさらに増え続けています^^;)にもご期待いただきながら、来年もまた変わらずお立ち寄りいただければ幸いです。

尚、弊社の年末年始の休業期間は下記のとおりです。

(休業期間)
12月29日(金)から1月5日(金)まで
※新年は1月6日(土)より、業務開始します。

時節柄、くれぐれも体調など崩されないよう、どうぞご自愛ください。
来年も変わらぬご高配を賜れますようお願い申し上げ、年末のご挨拶とさせていただきます。

それでは皆様よいお年を^^/

渡辺浩二