建築基準法は1950年の成立から、時代の変化に沿った改正を重ねて今日に至っています。
改正は、安全性を高めるなどの、規制を強化する方向の改正であったり、あるいは素材や測定方法などの技術的な進化を考慮した、緩和に向かった改正であったりと様々ですが、通底する考えは、その改正によって、より使いやすく暮らしやすい、「よりよい建築物」の実現で、これからも、さらに「よい」建築物を目指した改正は続いてゆくでしょう。
今回は、平成29年(2017年)に施行※された、「階段に関する基準の合理化」についてご紹介します。というのは、この合理化が頭に入っているか否かで、主に「既存住宅を住宅以外の用途へ再利用する」際の、計画内容が大きく異なってくるからです。

建築基準法での階段の規定は、その建物の用途等に分けて、具体的な各寸法が施行令第23条に定められていますが、
上の図のように、この合理化(改正)によって、一例として、既存住宅をシェアハウスに用途変更するケースを考えると、それ以前であれば、大多数が「階段の段数を増やす(=かなり大掛かりな工事になる)」計画を盛り込まないと成立しなかったものが、既存の階段に手摺とノンスリップ材を追加することで済みます。
安全性を担保したうえでの工事範囲の縮小は、同時に不必要な工事コストを削減し、「既存」建築物を再活用する、といった観点からもこの改正は、非常に理にかなったものであったと言えそうです。
加えて添えると、この合理化(改正)は、その基準が「既存建築物の再活用に限る」と限定されずに条文に載ったことで、結果的に既存建築物の用途変更「以外」の計画において、たとえば狭小地での増築や新築計画の可能性も広げている、その点についても注目すべきであると個人的には思っています。
※以降、令和元年に、階段の奥行き(踏面)寸法を緩和する改正がおこなわれています。






