階段基準の合理化について

建築基準法は1950年の成立から、時代の変化に沿った改正を重ねて今日に至っています。

改正は、安全性を高めるなどの、規制を強化する方向の改正であったり、あるいは素材や測定方法などの技術的な進化を考慮した、緩和に向かった改正であったりと様々ですが、通底する考えは、その改正によって、より使いやすく暮らしやすい、「よりよい建築物」の実現で、これからも、さらに「よい」建築物を目指した改正は続いてゆくでしょう。

今回は、平成29年(2017年)に施行※された、「階段に関する基準の合理化」についてご紹介します。というのは、この合理化が頭に入っているか否かで、主に「既存住宅を住宅以外の用途へ再利用する」際の、計画内容が大きく異なってくるからです。

建築基準法での階段の規定は、その建物の用途等に分けて、具体的な各寸法が施行令第23条に定められていますが、

上の図のように、この合理化(改正)によって、一例として、既存住宅をシェアハウスに用途変更するケースを考えると、それ以前であれば、大多数が「階段の段数を増やす(=かなり大掛かりな工事になる)」計画を盛り込まないと成立しなかったものが、既存の階段に手摺とノンスリップ材を追加することで済みます。

安全性を担保したうえでの工事範囲の縮小は、同時に不必要な工事コストを削減し、「既存」建築物を再活用する、といった観点からもこの改正は、非常に理にかなったものであったと言えそうです。

加えて添えると、この合理化(改正)は、その基準が「既存建築物の再活用に限る」と限定されずに条文に載ったことで、結果的に既存建築物の用途変更「以外」の計画において、たとえば狭小地での増築や新築計画の可能性も広げている、その点についても注目すべきであると個人的には思っています。

※以降、令和元年に、階段の奥行き(踏面)寸法を緩和する改正がおこなわれています。

残暑お見舞い申し上げます

今年の境港は6月からすでに「夏がはじまったような」気温が続き、ときおり耳にするように、日本列島は亜熱帯になってゆくのかなあ、などと思いながら過ごしていたのですが、立秋を境にして、そしてここ数日の降雨の影響もあってか、気温は幾分落ち着いたようです(けれど蒸し暑い^^;)。皆様お住いの地域はいかがでしょうか?

ちょうど、そうした暑さがはじまった6月から、既存建物を調査する機会に多くのご縁が続いています。場合によってはほぼ一日屋外に立ち、テープとコンベックスを片手に実測をおこなっては、刻々と移動する日影に身を寄せながら、建物のありようをノートに書き写す作業を繰り返しているうちに、例年以上に日焼けしてしまいました。あらためて直射日光のパワーと、日影のありがたさを思い知ることになっている今年の夏ですが、「ファン付きベスト」の購入は、まだギリギリのところで踏みとどまっています^^

予報によると、境港、そしてお隣の米子市、松江市を含んだ鳥取県西部、島根県東部は、明日13日から(弊社も15日まで、夏季休業に入ります)は天候も回復して、明後日以降はふたたび夏らしい気候が続くようです。外で作業される方も、室内ですごされる方も、適切な温度管理と適度な休憩・水分補給など、くれぐれもどうぞご自愛ください。そして現在、強く長く雨が降る地域の皆様には、くれぐれもどうぞご安全にあられますように。

明日は、私も水分補給に気をつけて、自宅庭の草刈り作業に励みます。

弊社「別館」増築・改修工事完了しました。

弊社事務所(ホームページ ^^;)の別館として、2015年から公開をはじめた 「家づくり資料室」 ですが、ちょうど10年を経過したところで、主に以下の2つについて、追加と変更をおこないました。

・項目の追加「1-1:耐震性能の『見える化』」
・フォーマットの変更

本日10:00より、正式にリニューアルオープン致します。 渡辺浩二設計室別館「家づくり資料室」 、これまで以上に活用いただければ幸いです。

山陰は長かった。

前々回のブログ では、境港から車で東へ2時間半ほど走った先の、まだ雪の残る兵庫県北部、美方郡新温泉町にうかがった様子をご紹介しましたが、今回は、その兵庫行きから間を空けずに西へ向かった、島根県西部の浜田市(境港から車で約3時間)での様子をご紹介します。

ご依頼いただいた業務を終え、帰路に就いてしばらくすると左手に「石見(いわみ)海浜公園」の看板が目に留まりました。ちょうどよい時間だったので、昼休憩を兼ねて看板に誘われるまま、駐車場に車を停めて海浜公園内へ足を進めてみると、そこには・・・

透き通る青空、春の色になった海面、そして

白い砂浜の三点セットで構成された、見事なまでの「春の海」が広がっていました。

浜田市は、廃藩置県以前には「石見の国(島根県大田市 / 出雲市を境にして、出雲市以東が『出雲の国』)」と呼ばれた地域ですが、緑よりも岩肌が目立つ半島の景色は、境港で目にする島根半島の、豊かな木々や季節の花などに比べると、同じ山陰とはいえ随分違うものです。そうした違いにも感心しつつ、しばらく海風に吹かれながら過ごして、図らずも心地よい昼休憩になりました。

数年前にお邪魔した際には4時間近くかかった、浜田市までの道程でしたが、高規格道路の整備が進み、(個人的に「走りにくいなあ」と感じる区間を一般道に切り替えたルート設定であっても)片道で約1時間ほど短縮することができました。これは想像以上の負担減でした。

前々回ブログの兵庫県北部から今回の島根県西部まで、同じ春の空の下でも、積もる残雪から春の海までの「振れ幅」を持つ山陰は、長いです。

鳥取県版構造計画ガイドライン(案)

先日、鳥取県主催の「鳥取県版構造計画ガイドライン(案)」説明会に参加しました。

ガイドライン案は、「戸建て住宅において、一般に流通している部材で、経済的で高い耐震性能を確保する」ための、6つの構造計画のルールにより構成されています。

この6つのルール、説明会前半での「はじめの1から5」の解説では、凡そ一般的・堅実なお話が続いた(来月改正となる建築基準法を補完する意味では、大変意義深い内容でした)のですが、その後の説明会後半、「6つ目」のルールであるスケルトン・インフィルの、実践例のご紹介とご説明には、なるほどその手があったかと、一気に眠気が吹き飛びました^^;

やや大仰ですが、これ(スケルトン・インフィル)は、ここから先、たとえば今から10数年後に振り返えると、ひょっとすると木造住宅の「構造のあたらしいスタンダードのひとつ」になっているかもしれません。

大工さんの創意工夫から生まれた実践例に対して、その考え方を私たち設計者が活かす方法、具体的には基本・実施設計段階での室の区切り方や部材配置について、あらためて考えるための非常によい機会になりました。