「私家版 家づくりガイド」その2-4(夏涼しく冬暖かい家⑤)

今回から冬編です。

夏の「ほどほどに快適」な室内環境の「肝」は、一言で言えば「熱を逃がす」ことでしたが、冬は逆に、室内の熱を「逃がさない」ことが最優先事項です。

けれど夏に、どんなに防いでも熱が室内に侵入してきたように、冬も、外に逃げようとする熱のすべてを室内に留めることはできません。

その様子をよくみると、熱には、3つの「逃げ道」が用意されていることがわかります。

熱の3つの逃げ道とは、

①屋根と外壁(床下)
②窓ガラス
③換気

です。

つまり、建物全体から逃げてゆく熱量は、

①から逃げてゆく熱の量
②   〃
③   〃

の総量になります。

「逃げてゆく熱の総量」と「室内で作られる熱の総量」が同じならば、室温は一定を保ち、

逃げる熱が勝れば、室内は寒くなり、室内で造られる熱が勝れば、暑くなります。

たとえば、
外気温5℃、室内温度20℃ で一定であった場合に、

建物全体(逃げ道①+②+③)から「1時間当たり100」の熱が外に逃げてゆくとします。

そのときにストーブでもエアコンでもよいのですが、逃げてゆくのと同じだけの熱、つまり、「1時間あたり100」の熱を室内でつくりだしてやれば、室内は20℃に保たれます。

かなりざっくりした話ですが、これが室内温熱環境を検討する際の基本的な考え方で、このときの逃げる熱の量の度合いは、ほぼそのままその家の断熱性能となり、一般的にその性能値は、

性能値=逃げる熱の度合い ÷ その家の延べ床面積(または屋根・外壁・窓の総面積)で、あらわすことができます(いわゆるQ値)。

断熱材の性能とは、おおづかみに言うと、その「素材自体」の密度です。同密度では厚みが厚いほど熱を通せんぼできる割合が大きく、つまり高性能です。

断熱材について、布団状のものを壁のなかに入れたり、発泡スチロールのような板を外壁の下地に貼り付けたりする事例や、いろいろな商品の広告やCMを御覧になったこともあるかもしれませんが、こまかな空気層を多数重ねて熱を伝わりにくくする原理はどれも同じです。

工法を含めた断熱材選定について、諸説入り乱れてネット掲示板などでは「けっこうすごいこと」になっていたりもします。が、基本的な考え方は市販のカレールウを選ぶときと同じで、その製品に定められた施工をおこなえば必ず設計した性能値は出ます。ですから施工精度とコストをバランス取りしながら材料選定をおこなえばそれで大丈夫です。

ガラス窓が熱を通す量は、おおよそ断熱材を入れた壁の10倍です。

そして一般的な住宅では、外壁+屋根面の10%程度がガラス窓の面積です。

つまり外壁屋根面と同じだけ(10%の面積×10倍)の熱が窓ガラスから逃げている勘定になり、ガラスをふくめたサッシ部分の仕様・面積を含めた検討は、イメージ以上に断熱計画には有効で重要です。

過去に設計した住宅のデータを紹介します。

省エネ等級4の仕様、述べ床面積40坪の住宅の、それぞれに熱が「逃げる」割合は、

①屋根・外壁 40%
②ガラス窓  40%
③換気    20%
∴①+②+③=100%

と、なりました。暖房の熱源はペレットストーブ1台にてまかないす。

今年で完成から5回目の冬(2013年)になりますが、これまで快適に過ごしていただいています。が、快適な室内環境には、これら熱量計算のほかにあとふたつの「隠し味」が必要です。

やや長くなりそうなので、次回に続きます。

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