庇(ひさし)と簾(すだれ)です。
もうすこし詳しく書けば、
・南の窓の軒(庇)と
・東西の窓の簾(すだれ)
日射量は屋根面の次ですが、夏の遮熱はここからが本番です。
そこでほぼ真上から地面と屋根面にぎらぎらと光を降り注いだ後、今度は昇りと同じ勢いで高度を下げ、夕方に西の壁面を存分に熱して、西北西の空に沈んでゆきます。なんだかやたらにエネルギッシュで暑苦しいかんじです。
屋根とは違い、外壁には窓があります。窓のない部分については屋根と同じように、熱を室内に持ち込まない(断熱・遮熱)工夫をすればよいのですが、ガラス窓は「ノーガード」ですから、そこだけは温室のように、日射を透して室内を直接熱してゆきます。
日射は防ぎたいけれど、明るさや通風、そして視界の抜けは確保したい。そのためには窓は日射に対して「閉じながら開いて」いなければなりません。こうした一見矛盾することがらを実現できる方法は、実は、先人からの知恵として、今も「ふつうの家のこと」として生き続けています。
せっかくですからその仕組みを再確認しましょう。まずは南面から。
夏至のころ、南東に位置する午前11時の太陽はもうすでに高く、高度(仰角)75度と、建てかけた梯子くらいに急勾配です。この角度で高さ2メートルの掃き出し窓に差し込む日差しを計算すると、窓から室内に向けて、奥行き40センチほどになります。
木造住宅の場合、大抵の屋根の南側には軒が出ていて、その寸法で夏の直射日光を遮ることができます。
夏至の11時の太陽ならば計算上は、床高3メートル(平屋建を想定)のところに軒先があったならば、たいていの家(80センチの軒の出)では、日差しは室内には入りませんし、窓上端に庇を設ける場合も、一般的な庇の出(40センチ)で遮ることができます。
この角度では、暴風雨でさす雨傘のように、庇でも軒でも防ぐことはできません。朝はセミの鳴き声とともに、そして夕方には地表面が一日蓄えた熱とともにギラギラした光を窓越しに受けるのは、夏らしいといえばこのうえないほどに夏らしいのですが、実際のところ暑くてやってられません。そこで対策です。
いちばん効果的なのは、これらの面にいっさい窓を設けないことですが、汎用性のある考え方ではありません。
ではどうするのかといえば、まず開口は必要最小限にとどめて(かつ、外壁面積もできるだけ小さくして)、その開口にはキーワードの2つめの「簾(すだれ)」を設えて日射を遮ります。
簾でも朝顔でもゴーヤーでも植栽でも、原理としての括りは「外付けブラインド」なのですが、ナチュラルでユルいイメージに反してなかなか「いい仕事」をしてくれます。性能値でいえば、日射の80%を遮る効果があり、それは熱線反射ガラス、いわゆるlow-Eガラスを凌ぐものです。
そしてそれらは基本的には設置位置の検討+αですから、無駄にスペックを引き上げないという意味で、潜在的なコストダウンと同義です。
外からの熱を防ぐ方法に続いて次回は、室内の熱気を外に出す方法について書きます。