「私家版 家づくりガイド」その2.1(夏涼しく冬暖かい家②)

夏は、太陽光が地表面に対して垂直に、つまり、正面からまともに当たることと、日照時間が長いことにより、あれだけの暑さを生み出しているのだそうです。

植物は元気いっぱいですが、私たちがこの季節の光を直接浴び続けると、日射病や熱中症など、場合によっては生命の危険に関わります。「ほどほどに快適」をめざすとはいえ、これは絶対に避けねばなりません。

住宅の夏の日射の防ぎ方について要約するならば、

・窓は日射しの通り道をできるだけ避けて
・屋根と外壁は熱を室内に伝えにくいつくりにする

といえるのでしょうが、もうすこしだけ詳しく、屋根と外壁に分けて書いてゆきます。

自らが動くことのできない住宅が、夏の日射を遮るためには、相手(太陽)の動きを知って、日射しが「自分」のどの部分に当たり、どこを通るのかを知ることがはじめの一歩です。

夏の太陽は一年を通じてもっとも高い軌道を通ります。

夏至の正午にはほぼ真上から降り注ぐくらいの高度(角度)となるのが特徴で、前回のブログにも書きましたが、夏に建物が最大の日射を受けるのは屋根面です。次に東と西面の壁、南面の壁と続いて、北面の壁がもっとも日当たりが悪いです。

それでは日射の防ぎ方について、まずは屋根面からです。

天窓を除けば、住宅の屋根には瓦や鉄板や下地材などが用いられ、ガラスなどの光を透す材料が使われることはありません。

室内への日射対策は、光を透さなければ、つまり「屋根があれば」、ひとまずは大丈夫です。けれど話はそれでは終わりません。

太陽光を受けた瓦や鉄板は、ちょうど電子レンジであたためられるお弁当のように徐々にそれ自体が熱を帯びて(同じ原理なのだそうです)、下地材へと伝わってゆきます。

熱は高いところから低いところへ流れるので、瓦(鉄板)から下地へ伝わった熱は、屋根裏の空気を経由して天井に伝わり、やがて室内まで到達します。これを防ぐためには、熱を伝えにくい素材を屋根から室内までの間に入れて通せんぼしてやることが必要で、このことを「断熱」といいます。

断熱に対して、その考え方と材料がまだ普及していなかった時代の家の2階に上がると、夏の午後には長居できないほどの暑さになることがあります。

それは午前中のうちに熱せられた屋根材が屋根裏空間の蓄熱容量を超えた熱源となってオーバーヒートをおこし、その熱が2階の室内にも及んでいるからで、いうなれば当時の家は屋根裏の空気と天井と、場合によっては2階の部屋までが断熱層の役割を果たすことで1階の室内環境を太陽の熱から守っていたことになります。

それじゃあんまりだよと叫ぶ、子供の頃の私をふくめた当時の2階の住人たちの声を聞いてくださったのかどうかはわかりませんが、現在流通している断熱材のほとんどは、一般的な屋根裏空間、いわゆる屋根の三角部分を必要としないほどに高性能です。

そしてすべての商品名を把握できないくらいに多種多様で、「日本住宅性能表示基準」によると、断熱材の仕様は7つの区分にわかれ、種類だけでも合計で31あります。

それぞれの違いや特徴についてはあとで詳しく書きますが、その家の断熱性能を要約すると以下の式、

※その家の断熱性能
={(断熱材仕様+設計精度+施工精度)*施工面積}-ガラス窓と換気による熱損失

にまとめることができます。


焚き火にあたっているとき、誰かが前に割り込むと、とたんにあたたかみが消えてしまいます。

これは炎から出る遠赤外線が前の人によって遮られるからで、このように熱線を遮ることを「遮熱」といい、太陽光も熱線に含まれます。焚き火の前に割り込んだ人や晴天の日傘などはちょうど、遮熱材の役割を果たしているともいえます。

実際に使用した事例を私自身はまだ持ちませんが、アルミなどの金属を蒸着した遮熱シートを複層の屋根下地に貼ったり、改修工事では屋根表面に遮熱性能をもった塗料を塗ることもあるようです。反射率の高い色や素材を選ぶことは、シンプルですが手堅い遮熱の手法ともいえます。

遮熱材の国内販売がはじまったのはこの10年くらいのところで、まだ公による分類や性能に応じた仕様は定められてはいません。が、実際に使用され公開されているデータからみると、相応の効果はあるようです。私見ですが、いずれは断熱材をアシスト(特に外断熱で有効だと思います)する方向で基準が固められてゆくのではないかと予想しています。

次回は、外壁への日射の防ぎ方についてです。

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