既存不適格住宅と規制の合理化

「既存不適格」というとなんだかよろしくないコトバの響きですが、法改正がたびたびおこなわれる建築の世界では割とよく耳にする言葉で、現実的にはそれほどのマイナスイメージはありません。

ウィキペディアによると、「建築時には適法に建てられた建築物であって、その後、法令の改正や都市計画変更等によって現行法に対して不適格な部分が生じた建築物のこと」とあります。建築に関する法規には、市街地建築物法(1920-49)と、建築基準法(1950-)がありますが、

1924年(耐震計算の義務化)
1950年(設計震度の改定)
1970年(用途地域の整備)
1981年(新耐震基準の制定)
2000年(平成の大改正)
2002年(シックハウス症候群に関する規制)

など、その時代を反映した、都度の改正がおこなわれてきました。

「1968(昭和43)年7月竣工のワタナベ邸(築46年)は、当時の法令を遵守して設計施工されましたが、現在に至るまでの法改正で、現行法に適合しないところも出ているようで、今度、助成を利用して耐震診断を受ける予定です。」

具体的には、上記が既存不適格の状態です。

改正のたびに日本中の建物に法への適合、つまり改修工事を求めることは現実的には不可能なので、後々に(建築確認申請を伴う規模の)リフォームや増築などを現行法に沿っておこなうまでは不適合は問わない(その使用を認める)、というのが今の建築行政の考え方で、現実に則した運用のなかで、安全性、快適さ、コストなど、状況に応じた最適を提示することは、私たち建築士に託された、大切な業務だと考えます。

母屋と離れと作業場のような、複数の建物を持つ同一の敷地では、ひとつの建物の建替えや増築などをおこなう場合には、原則はその他の建物も現行法に適合させねばなりませんでした(頷くべき理由はもちろんあるのですが、こんなことして誰が喜ぶのだとも言いたくなります)が、このあたりの規制緩和(合理化)も進んでいて、昨年度の法改正により、さらに計画の幅が拡がりました。

残された課題や突くべき重箱の隅はまだあるのでしょうが、おおきな流れから見た建築の世界は、官も民も間違いなく、進むべき方向を向いて歩いています。

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