空気の密度はとても小さく(1.2kg/m3)、同じ条件での水(1000kg/m3)の約800分の1です。「空気のような存在」などといわれるように、普段はそこにあるのかないのか、わからないほどですが、風となって巨大なブレードに当たることによって発電のエネルギー源となり、風速が増せば樹木を倒し自動車をひっくりかえし、建物を倒壊させるほどの力を持っています。
ある場所に、1メートル四方(1m×1m)の板が看板のように地面に垂直に建っているとします。そこに風速20m/秒 の風が当たったとき、板に加わる力を計算すると約29kg(※1)で、大きな米袋一袋の重さと同じぐらいの力です。
これなら私でもなんとか担いで運べるかもしれません。なんだそのくらいのものかと、体感する風の強さに比べて力が弱いような印象を持ってしまうかもしれませんが、風を受ける面積が大きくなると、この話はずいぶん変わってきます。
例えば同じ風速で、50m2の壁面(≒総2階建て延床面積40坪の住宅の、外壁の一面)が受ける力は約1400kg(※2)と、3ナンバーの自動車一台分の重さと同じほどにもなります。これだけの重さ(力)になると、もちろん人力では太刀打ちできません。
建築基準法で想定される風の強さは、地域により最大風速(※3)30~46m/秒の範囲で定められています。木造建築物の構造設計の際には、地震と風圧力に対する検討をおこなうのですが、2階建てぐらいの建物高さの場合には、地震に対してよりも風圧力に対してのほうが、必要とされる強度が高くなって結果的に「耐風性能イコールその建物の構造強さ」となることも多いです。
建物の軸組み部分の高さを抑えた(=風圧力を受ける面積を減らした)設計とすることは、コスト削減に併せて、強い構造へ至る、確実なルートのひとつでもあります。
弊社のある境港市は、建築基準法では、「最大風速30m/秒」の地域で、気象庁の観測データによると、これまでの境港に吹いた史上最大値は、最大風速が19.5m/秒、最大瞬間風速(※4)が42.0m/秒で、ともに1991年の19号台風によるものでした。
先日の15号台風の通過前、通勤路沿いにある建築現場を覗くと、産廃コンテナは飛散防止のシートで覆われ、足場のメッシュシートは寄せて建地に固定され、道板の上と場内もきれいに片付けられ、お手本にしたいような準備と整い方でした。私も冬場の強風対策には、よくよく注意して備えようと思います。
現在稼働中の現場関係者の皆様には、引き続きどうぞご安全に・・・・
※1
1/2(係数)×1.2(空気の密度)×20(風速)×20(風速)×1.2(風力係数)
=288N(約29kg)
※2
288N×50m2=14400N(約1400kg)
※3
10分間の計測平均値です。
※4
3秒間の計測平均値です。