50年前の 「板図」

「上乃木の家」の解体工事中の現場から、建物の板図(いたず)が見つかりました。

板図とは、文字通り大工棟梁が「板に書いた(平面)図」のことで、昔はこの板図と、建物高さのそれぞれの基準を記した棒である、矩計(かなばかり)棒があれば、それだけで家一軒が建てられたのだそうです。

この板図、リビングの床を剥がしたところにあらわれた、囲炉裏の中から発見されました。築年数から逆算すると、およそ50年前に描かれたもののようで、クライアント様のお母さまに伺ったところ、当時の建物の周辺は畑と田んぼばかりで、敷地前の県道も舗装されていない状態だったのだそうです。縦長の板の上部が2階平面図で、下部には1階平面図が描かれています。

裏面には屋根伏図が描かれています。ゴム底の靴跡が発見された際の様子を生々しくあらわしているようで、よくぞ他の材に紛れず、無事に出てきてくれました。

私たちも(基本・実施)設計図を描いて、完成後に工事写真と竣工図を残すのですが、こうして大先輩が描かれた50年前の板図を手に取ると、この風格にはまだまだ私では及びません。とはいえ、これから皆でつくりあげてゆく家、そのようにして出来上がった家に対する思いや願いの「根っこ」の部分は、昔も今もきっと、変わらないのだろうとも感じています。

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