「家康、江戸を建てる」門井慶喜(祥伝社)

先日、店内入口のラック(棚)に置かせてもらっている弊社パンフレットの補充に、今井書店さんへお邪魔した際に偶然平積みと「目が合って」しまいました(^^;

で、その後、帯の「『ブラタモリ』が好きなら絶対に楽しめる!!」とのお誘いに誘われるがままに手に取ってレジに向かい、その日の晩から読み進めて昨晩読み終えました。

(相当に)ざっくり言えば、「江戸時代」が出来上がってゆく過程を、社会インフラに焦点を当てて描かれた小説で、具体的には、第1話から第5話までの5つのエピソードに、江戸の、

治水
貨幣統一
上水道整備
城郭整備
天守閣建築

それぞれの事業がどのようにおこなわれ、完成していったのか、その試行錯誤と創意工夫と智謀知略が記されているのですが、日本史に明るくなく、東京への土地勘をほぼ持たない私でさえ、読み始めてすぐに本の中に引き込まれた理由は、登場人物がすべて実在の人々であり、それぞれのエピソードの舞台が、

利根川
日銀本店
神田上水
皇居

として現存しているという、いわばノンフィクション効果というか説得力、にもあるのでしょうが、そのほか、ついうっかりすると「ずっと昔からあって、未来永劫その存在を疑わなくともよい」と、捉えがちにもなる首都東京も実は「何もない寒村」からひとつずつ積み上げていった結果、であることの途方もなさと、その途方も無さの裏側からしか確かめようのない、人の意思や良識や工夫や知恵の力を肯定できる手応えへの喜び、あるいは第2話で、のちに慶長小判を造る事となる橋本庄三郎が言った「この世の誰もがまだ見ぬ風景、それを見たい」と思い願うこころへの淡い共感など、いろいろとあるようです。

ブラタモリの他、「プロジェクトX」が好きだった方にもおススメで、第155回直木賞受賞作です。

カテゴリーlime