木造建築物の防耐火設計

諸事情により今年の夏 、木造建築物の最新の防耐火設計について、詳しく学ぶ機会に恵まれました。

具体的には、法令集や上の写真の「木造建築物の防・耐火マニュアル」などを手引書として、主に木造準耐火建築物のケーススタディを繰り返しながら、計画概要の検証からディテールの掘り下げまでをおこないました。

今回はそこで得た、「学びのお裾分け」をします。

木材は、一般的には「燃えやすい」と思われがちですが、 実際には、炭化層が表面に形成されることによって、内部へ燃え進みにくい特性を持つことが、実験で確かめられています。

この特性を活かし、柱梁など主要構造部の「石膏ボードなどの不燃材料による被覆」と、「被覆材相当の断面寸法を加えた『木材あらわし』」を適材適所に組み合わせることで、 必要な防耐火性能を満たしつつ、木材の持つ高コストパフォーマンスと意匠性、さらに言えば環境負荷低減の効果を存分に発揮した建物を計画することができます。

実例もこの10年ほどの間に、学校や体育施設や道の駅などの公共施設、商業施設や事務所ビルなど、「質実剛健からシンボリックまで」の振れ幅で、少しずつその数を増やしています。

そして現在では、このような構造で一般的な規模・用途のもの、たとえば3階建ての共同住宅や床面積3000㎡までの店舗等の特殊建築物、または準防火地域内の床面積1500㎡までの事務所ビルや診療所、戸建住宅等であれば、(スーパーゼネコンさんではない)私たち市井の建築士や地域の工務店・建設会社さんが、それぞれに蓄積している「木造でのノウハウ」を活かしながら実施できるほどに、後方支援する法令や告示、研修制度等の環境整備が予想以上に進んでいます。

ここからは余談です。

冒頭に書いた「諸事情」とは、二級建築士試験の課題対策でした。

本年度の二次(設計製図)試験の課題は「木構造の保育所」でした。保育所は児童福祉法により、室の配置に応じて必要な防耐火性能を求められる、特殊建築物です。

以前、当ブログのどこかでお話ししたように、資格学校の製図試験対策講座を担当している関係上、課題に関連する法令を含む計画全般について、毎年ひと通りの整理を済ませてから講義に臨むのですが、本年は図らずも、最新の、木造建築物の防耐火設計の設計自由度とその可能性について、深く学ぶ機会に恵まれました。

試験は9月中旬の二次試験を経て、いよいよ来週が合格発表です。受講生の皆さん、そして試験に向けて精一杯の準備で臨み挑んだ受験生全員に、それぞれよい結果が訪れますように^^/