新耐震基準は、「最新」ではありません

長文となったので、まずは今回のブログで「最もお伝えしたいこと」を抜き書きします。

大掴みに、そして無用な混乱を防ぐ意図で言うと、木造住宅については、「新耐震基準(1981年)」は、最新の基準ではありません。 最新・現行の基準は、「2000年基準(2000年)」です。住いの耐震性について不安に感じられる方には、公的助成を利用した耐震診断をお勧めします。

以下、本文です。

1月1日に発生した、令和6年能登半島地震は、日毎にその被害の大きさを知ることとなっています。また、報道の隙間から零れ、現地でなければうかがい知ることができない過酷な状況は、私(たち)の想像を遥かに超えるものだということは、辛うじて想像できます。どうか一人でも多くの方々の身の安全が保たれて、被災された皆様、救助・復旧に携われている皆様が、どうか安全に過ごされるよう、祈るばかりです。

私たち人間が、いまのところ自然災害を100%解明できていない以上、「建築」に関わる者の全ては、謙虚な姿勢でものづくりに臨み、それと同時に、いたずらに不安を煽る(ことになるかもしれない)物言いや振る舞いには、殊更に注意深くあるべきだと私は考えます。

1月7日に配信された下記リンクの記事について、差し出がましいかもしれませんが、少しだけ補足説明をさせてください。

「新耐震基準」導入後に新築・改築でも半数の木造家屋が「全壊」に…石川・珠洲の現地調査 (msn.com)

は、その見出しと記事の内容について、厳密には「嘘は書かれていない」のですが、新耐震基準、といった専門用語について、その実態が冒頭の抜き書き、「新耐震は<最新>ではない」ことをご存じないであろう一般の方々に対しては、やや不親切でした。もう少し踏み込んで言えば、この記事は、場合によっては一般の方々に対して

「去年家を新築したけど、ウチも地震で全壊してしまうのか?」
「実家を耐震リフォームしようと思っていたけど、やっても意味がないのか?」

などの誤解を招きかねないものでした。

実際に、弊社にこの記事に対しての(上の誤解のような)お問い合わせが届いたのですが、その際、この記事が、おそらくの本意であろうと思われる、「今回の地震で全半壊を免れた、新耐震基準の家(1981年6月1日~2000年5月31日)に現在もお住いの方々への、余震への緊急の注意喚起」とは伝わらず、ミスリードの記事として読めてしまう可能性に対して、何かしらの補足が必要だと感じました。

という訳で以下、冒頭で抜き書きしたものの繰り返しになりますが、補足説明をします。

大掴みに、そして無用な混乱を防ぐ意図で言うと、1978年の宮城県沖地震の被害から学び、1981年の法改正で設けられた「新耐震基準」ですが、木造住宅に代表される、小規模・低層の木造建築物については、最新の基準ではありません。

最新・現行の基準は、1995年の阪神淡路大震災の被害から学び、2000年の法改正で設けられた、「2000年基準」と呼ばれるもので、新築はもちろん、耐震診断・耐震改修工事においての基準にもなっています。

このブログを書く際、鳥取県の耐震助成事業について調べ直してみたのですが、以前は対象外だった、新耐震基準の住宅(1981年6月1日~2000年5月31日)についても、耐震診断・耐震改修工事をおこなう際の助成を受けられるよう、改正されていました。これまでは、新耐震以前の住宅(~1981年5月31日)だけが対象でした。

住宅・建築物の耐震化(鳥取県震災に強いまちづくり促進事業)/とりネット/鳥取県公式サイト (tottori.lg.jp)

鳥取県「以外」の各都道府県において、対象となる住宅が「どの年代までなのか?」について、その全てを把握できていませんが、耐震化への助成自体は、全ての都道府県に整えられています。お住いの耐震性について、少しでも不安に感じられる方は、助成金を活用して耐震診断を受けられることを、強くお勧めします。