いわゆる 「地盤リスク」 について

 
熊本地震から1年が経過しました。

 

4月14日に前後して各種報道より発せられた「地盤リスク」という言葉について、それらの報道を目にし耳にしたところでは、なんとなく掴みどころのない印象(で、どうすればよいのだろう?)を受けました。

そこで今回は、その「地盤リスク」について、現段階で可能な対策について、整理して記してみます。

まず、あらためて内容のおさらいをします。

NHKの特集記事に目を通しながら整理すると、今回の一連の報道で言われるところの「地盤リスク」とは、<表層地盤に粘土質などの、「比較的柔らかい地層」がある場合、その柔らかい地層によって、地震の揺れが局所的に増幅されるリスク>のことであり、熊本地震では、益城町宮園地区の一部で、木造住宅に深刻な被害をあたえた。と、言えるようです。

そして、その対策としては、地盤を大規模に改良するには多額の費用が必要で個人で行うことは難しく、現実的なのは家の壁を補強するなどして耐震性を強化することが挙げられ、

その他、国は今年中に、まずは首都圏の「表層地盤」による揺れやすさを示した地図をインターネット上で公開する予定で、さらに2年をかけて、東海地方で詳細な解析を実施し、その後、全国的に進めていく予定であることも見えてきます。

では、現時点で私(設計監理兼、CM実務者)にできる「地盤リスク」対策は何だろうかと考えると、現時点で、

1:「表層が柔らかい地盤」 をみきわめて、
2:「柔らかさ」 に応じた、耐震性を強化した計画とした

設計をおこなうことが可能です、と言えます。この2つを実現するための方法ですが、

<1について>
「 <柔らかい地盤> であるか否か?」の判定については、建築基準法施行令88条2項により指定された地域であるか否かの判定の他、それぞれの敷地に対する個別調査による判定が、現在可能になっています。

具体例としては、地盤調査会社のビイック株式会社さんでは、告示で定められている地盤種別(≒増幅率)の判定が、通常の表面波探査に併せた現地調査で可能であるほか、より詳細な調査・判定についても現在準備中である、とのことでした。

<2について>
そうした調査 (判定) の結果を踏まえておこなう、建物の耐震性強化については、新築か改修かを問わず、また、耐震か制振か免振かに関わらず、例えるならば、サプリメントに過度に頼ることなく自然の食べ物から栄養を摂り適度な運動をおこなうことが人間の身体には大切であるように、プランニングの初期段階から、

・構造・デザイン・使い勝手・コスト

をバランスよく計画してゆくことが、その建物の「身体」にはとても大切で、それら個別の具体例に応じた設計・施工におけるコーディネートの質が、現実の計画での最重要課題であるといえます。

と、ここまで書いて読み返してみたのですが、なんだか掴みどころのない、それこそ「現在計画中だけど、で、結局どうすればよいの?」とのご意見も頂戴しそうな文章になってしまいました。

そこで、検討すべき項目のなかから一例を挙げます。計画の初期段階の構造計画において、耐力壁の量とバランスの他に、「屋根と床の荷重を適切に地盤に伝えることができる柱の配置と、その配置から導き出される間取り」について、慎重にご検討なさってください。このポイントを意識するだけでも、後々ずいぶん違ってきます。

昨年の ブログ にも書きましたが、災害を経験するほどに、「知れば知るほどに、分からないことの範囲の広さを知る」ことが続いているようななかでも、本当に少しずつではあっても「これだけは確かに分かっていること」の範囲は確実に広がっています。私も精進せねば。

大阪木材仲買会館 (大阪府大阪市)


先月、大阪出張の旅程を半日延ばして、大阪木材仲買会館(2013年、設計施工 : 竹中工務店)の見学に行ってきました。

完成時期でいえば、横浜市のサウスウッドを抜いて、この建物が国内初の大規模耐火木造建築物となるそうです(1階は、万一の水害を考慮してのRC造)。

あらかじめこの建物の存在を知ったうえので訪問だったので、ああやっぱり写真よりも実物のほうがいいなあなどと、「割と普通な」感想を持ちながらのファーストコンタクトだったのですが、よくよく考えてみると大阪市内の防火地域内に建つ「木部あらわし」の事務所建築物はやはり(良い意味で)異質で、仮に、まったくの予備知識なしの状態で(例えば、近所にある市立図書館に寄ったついでに散歩したら、とか)たまたまこの建物の前を通りかかったとしたら、思わず足が止まり、うわ何これとしばらく立ち止まって凝視してしまいそうですが、実際にそういった様子の方は、少なからずいらっしゃるのだそうです(^^;

約束の時間となったところでアプローチを抜けて1階入口の扉を開け、先日見学のお願いを差し上げた者ですと告げ、名刺交換ののちに見学スタートとなりました。このあとに某行政ご一行の見学が控え、時間の限られたなかでしたが、ご厚意により、さまざまなところを見せていただきました。

そこで今回はその一部を「おすそ分け」します。見学は、まずはエントランスホールのエレベーターから、3階に上がりました。

3階大会議室です。

柱と梁は、表面の 「燃え代層」 、中間部分の 「燃え止まり層」 を備えたカラマツ集成材(「燃エンウッドTM」)で、開口部はヒノキ集成材の木製建具が用いられています。

机と椅子は、全体のデザインに併せてのオーダーメイドのようにも見えますが、どちらも既製品、とのことでした。



大会議室の木製建具を開けた先は、そのままバルコニーに通じています。

バルコニーは避難経路も兼ね、ここから東西2方向に設けられた階段を通って地上に避難することができます。3階バルコニーは2階バルコニーに架かる屋根を兼ね、同様に、2階バルコニーは1階外部の庇となって、風雨や日射から建物を守っています。その効果のほどを伺うと、竣工から5年目をむかえた現在も、ほぼノーメンテナンスで現状の外観を保たれているのだそうです。

バルコニーの段差部分に腰かけると正面に桜の木が見えるのですが、ここに座っての花見はさぞ心地いいだろうなあと、いろいろな質問に併せて、ここはお花見の時期に一般開放はされないのですかと尋ねてみたところ、残念ながら、それはなされていないそうです (建物の用途、性格上、無理もない話なのですが・・・)。



建物東側面と裏 (北) 面には、鉄筋コンクリートの防火壁兼耐力壁が立ち上がります。

地上から見上げる2階バルコニーは高すぎず低すぎず、建物ファサードのバランスも考慮されたうえでのちょうどよい塩梅で、まさに「ヒューマン・スケール」でした。



と、ひととおり拝見してエントランスに戻ったのですが、木、コンクリート、鉄のバランスが絶妙だなあと今、写真を整理しながら(そしてこの文章を書きながら)、あらためて感じています。これから先、5年後10年後に、それら各素材が時間を蓄え、風合いを増した姿にもまた、再会してみたいです。


忙しいなか、館内の案内と解説に時間を取ってくださった大町様、本当にありがとうございました。この場を借りて、あらためて御礼申し上げます。

映画 「この世界の片隅に」

こうの史代さんの同名漫画を映画化したもので、米子市内の映画館でも上映されていると聞いて、先日行ってきました。

以下、おそらく各所で発信されているであろうことばの焼き直しとなるのを承知で書きます。

アニメーションの映画なのですが、70年前の暮らしと理不尽な力の行使(暴力)が、絵空事でも他人事でもなく、いまの自分たちの生活と地続きであること、そこから皮膚感覚で伝わってくる恐怖(音響効果と相まって、特に防空壕のシーンは、ほんとうに怖かった)、そして、そのぶんだけなおさらに、頭にではなく骨身に染みてくるような日常の尊さが「リアルに」伝わってくる映画で、ツイッターなどで綴られている「もう、とにかく観てください」と、読みようによっては相当に乱暴な感想にも、そうとしか言いようがないのかもなあと、我が身にもある言葉にできなさ具合のもどかしさと一緒に、いちいち頷いています。

監督の片渕須直さんが言われているように、主人公の「すずさん」は、あれから齢を重ねられて、きっと昨年はマツダスタジアムでお孫さん達と一緒に赤いメガホンを振りながら大谷翔平を複雑な心境で見送って、そして今ごろは「菊池の守備範囲はあれが普通」「今年の堂林は一味違う」などとおっしゃりながら、今シーズンの開幕をお待ちのはずです。

竣工 (上乃木の家)

工期終盤の寒波に、やや(いやかなり)振り回されながらも、なんとか予定通りに竣工までたどり着いたところで、今度は引越しがこの冬二度目の大雪に重なり延期されていたのですが、先日晴天のなか、無事に入居されました(ヨカッタ!)。

その他の写真は、こちらからご覧ください。

外部テラス工事(大篠津の家)

「大篠津の家」も工期の終盤戦を迎えています。

建物内部のクリーニングまでが完了して、あとは外部の左官工事を残すのみなのですが、先月末から続く不順な天候に悩まされながら、晴れ間をみながらの作業が続いています。

外部テラスはモルタルを塗り木コテでやや粗めに押さえます。そして、乾燥を待ってからウレタンクリアで表面を 「濡れ色」 に仕上げて、いよいよ完成です。