冬 (と夏) に備えた家づくり 前編

境港は朝晩がめっきり寒くなって、とはいえまだ暖房のお世話になるほどでもなく、夕暮れ時にはひざ掛けと一緒にパソコンに向かっています。皆様お住いの地域はいかがでしょうか?

設計打ち合わせの際、寒い時期には暖房や断熱の話題が中心になり、夏は風通しについての所見を求められることが多いのですが、今回は、これからやってくる冬の寒さに備えた家づくりのポイントを整理しながら、それが夏の室内環境にどのような影響を与えるのか、以下の2点、

1:外部開口部(窓)を併せた断熱性能について
2:室内の気流について

について考えてみます(追記:長くなったので、2回に分けてお送りします)。

1:外部開口部(窓)を併せた断熱性能について

冬の朝、こっぽり包まった厚手の布団が快適なように、室内の熱を外に逃がさないことが、寒さに備えた家づくりの基本で、一定以上の断熱性能(布団の厚み)と気密性(こっぽり包まる)が求められます。このときに意外と見落としがちなのですが、実は、壁に充填する断熱材の性能(と施工レベル)と、ほぼ同等の影響を「窓(外部開口部)の仕様と面積」がもたらします。

一般的な2階建ての住宅の窓の総面積は、弊社設計の場合、外壁の総面積のおよそ10%程度です。対して、

・外壁 (断熱材を充填)
・窓(ペアガラスの窓面)

の、断熱性能(熱抵抗値)を比べると、窓は、断熱材の10倍の熱を通します(窓が単板ガラスの場合は、約20倍)。

つまり、建物全体でみると、窓からは、そのほかの外壁面と「少なくともほぼ同じくらいの熱移動」がおこなわれていることになります(10%の面積*10(20)倍の熱移動なので)。

全館暖房の熱源の、能力計算の際には、これらと計画換気による熱損失を加味した検討を要するのですが、いずれにせよ外部開口部(窓)の仕様と面積は、イメージ以上に寒さ対策への影響は大きく、計画時点で十分に注意しなければなりません。

夏の、建物の暑さ対策は、

・太陽の直射熱をできるだけ室内にとりこまない

ことが、計画の基本(のひとつ)です。

窓のない外壁面と屋根面への直射日光の熱を取り込まない(遮る)手法については、ベランダに干した布団が夏、ちょうどよい日除けになることがあるように、外壁と屋根の断熱性能を高めることが、実践としては最も有効です。

一方、窓については、

・日差しが「横殴り」に差し込む東面と西面には、できるだけ大きな窓は設けない
・夏の日射量が最大になる屋根面には、むやみに天窓(トップライト)は設けない

ことが「肝」で、冬と夏の家づくりの断熱性能に関して、開口部(窓)への配慮が、隠れた重要ポイントとなります。そして、冬と夏への対策の比較で「あちらを立てるとこちらが立たない」といったいわゆるトレードオフの関係は、断熱に関してはどうやら成り立たないようです。

2つめの項目の「室内の気流について」は、次回書きます(来週の金曜日に更新予定です)。

※このほかの室内温熱環境の計画について、もうすこし詳しい内容についてはこちらに記しています。もしよろしければ、ご参照ください。

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