冬 (と夏) に備えた家づくり 後編

前回の続き、後編です。

2:室内の気流について

室内の空気が動くこと、あるいは動かないことが、冬 (夏) の室内環境にどのような影響を及ぼすのか、考えてみます。

冬でも夏でも、空気は、暖められると軽くなって上昇します。冬場、暖房により暖められた室内の空気も、天井に向かって上昇します。一般的な2.4m程度の天井高でかつ、所定値以上の断熱計画が施された室内空間は、何がしかの対策が必要な程ではありませんが、大きな吹き抜けなどを計画する場合には、上昇した空気を床付近に循環させる対策(私は、床下に通じるファンを設置して、「空気式の床暖房」を兼ねた設計とすることが多いです)が必要です。

加えて、長期間にわたる材料の経年変化を考慮した、断熱性能を損なわない設計と計画を、どのようにアプローチして組み立ててゆくかは、その設計者の個性が現れるところでもあります。

夏には、

・室内の熱気は、速やかに外に吐き出す

ことが計画の基本です。夏の空気もやはり、暖められると軽くなって上昇します。

上昇した空気は、その勢いのままに、外に出ていってもらうとよいのですが、多くの場合、天井面まで上昇した熱気は、それ以上は上昇できず(天井があるので)、水平移動をしようにも、天井と窓の上端のあいだにある壁に阻まれ、熱を帯びたまま留まり続けます (伝統的な和室の続き間に設える「欄間 のもともとの役割は、この熱気の水平移動を妨げないことであったようです)。

ならば、熱気が留まらないように「出口」を前もって計画しておくのですが、建物の最も高い位置、天井に接して設ける窓が、その役割を担います。以前設計した住宅で、廊下の上部を吹き抜けにして高窓を設け、明かり取りと排熱を兼ねたのですが、竣工後、梅雨時にお邪魔した際に廊下に立つと、湿気を帯びた空気が、汗ばんだ肌を通り抜けて高窓に向かい流れてゆくのがとてもよくわかりました。

流れ出た熱気は、出たぶんだけ室内の気温と気圧を下げ、そこにあたらしい気流を生み、ちょうど京都の町屋のように、家自身が風をつくり、呼び込みます。(冬のところで書いたように)床下への空気の循環の手法ができたことによって、室内の気流についても「こちらを立てればあちらが立たない」といったいわゆるトレードオフの関係は、どうやら見当たらないように思います。

あたたかい空気が上昇する特性を活かした家づくりについて、加えて言えば、この特性は、屋根裏や外壁の排熱にも応用されて「通気工法」の名称で、現在の木造住宅では、スタンダードな工法として定着しています。

以上、大きく2つの項目に絞って、これからやってくる寒さに対する家づくりのポイントと、それが夏の室内環境にどのように作用するかを考え、整理してみました。このほか、快適な室内温熱環境づくりの要点について、こちらにまとめました。もしよろしければご参照ください。

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