左利きスケール

建築の仕事のなかで、寸法を測る道具には、その用途や精度、計測する長さなどに応じて、いろいろな種類のものがあります。

例えば、設計段階では、主要な縮尺があらかじめ刻まれた(三角形断面の)定規の「三角スケール」を使って図面上の寸法を確認したり、また最近では、CADで描いた図は、CAD内で長さや面積、角度を簡単にかつ高い精度で計測できるようになっています。

現場では、敷地や建物の原寸を測るための巻き尺には、要求される精度に応じて用いる素材の違いがあって、例えば地縄張りのときには(少々の伸びは問題ないので)樹脂製で、水盛遣方では(伸びは許されないから)鋼製で、といった使い分けをおこなうのですが、現場の状況や建物の内容によっては、測量用の機械(トランシット)によって、仰角や水平角、または距離を測ることもあります。こうした道具類が手元にないときにも、歩幅 (約50センチ)や、親指と人差し指の間(約15センチ)により得られた「ざっくり」した寸法は、計画の初期段階では貴重な資料になりますし、方位計測機能のついた腕時計は、ボタンひとつでその敷地の方位がわかって、これはなかなか重宝します。

上の写真中央の「黄色の丸いやつ」は、鋼製の巻き尺の仲間です。計測長さはおよそ10メートル弱まで、と短いのですが、手のひらに収まるほどの大きさで持ち運びに便利、職人さんも設計者も、現場では皆が携帯しています。呼び名はスケールだったりコンベックスだったりメジャーだったりと、いろいろな名前をこれまで耳にしてきたのですが、では正式名称は何だろうと調べてみたら、JISに倣って「コンベックスルール」と呼ぶのが、どうやらニアピン賞のようです(このブログでは以降も、呼び慣れた「スケール」で続けることにします)。

ブログタイトルにもあるように、写真の「スケール」は、左利き用で、(株)NEXTSTAGEさんの検査員研修の際に紹介してもらって使い始めました。一見何の変哲もないスケールなのですが、これは「痒いところに手が届く」優れものなのですが、あらかじめ断っておきますが、私は右利きです。

どのように「優れもの」なのかというと・・・

上の写真のように「左利き用スケールを左手に持つ」とは逆向きに、つまり「通常通り」に、

「右利き用スケールで(監理報告書と工事写真集の)写真撮影」をおこなうときには、上の写真のように、「<左手>に持ったスケールを右側に引き寄せて、右手に持ったカメラで撮影」しなければなりません。左利き用のカメラ(あるのかな)を使わない限りは、必ずこのようになります。

そして、(スケールを持つ)左手に浮かび上がる血管からもお分かりのように、この撮影は、撮影者にかなり不自然な姿勢を強います。

対して、「左利き用スケールを左手に持ち、右手のカメラ」での写真は、このような感じです。なにより身体が楽ですし、作業中に通りすがりの子供さんから「ねえおかあさん、あのおじさん、へんなかっこうでしゃがんでいるけどどうしたの?おなかがいたいのかな?」と指さされること(言い回しをマイルドに直していますが、ほぼ実話)も、これならばもう大丈夫でしょう。

それはともかく、同業の「なんだか窮屈だなあ」とお悩みの方、これはおススメですよ。一連の写真は、境港市内の店舗併用住宅の現場です。まもなく上棟をむかえます。

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