「私家版 家づくりガイド」その9(スマートハウス)

Nikkei4946.com によると、

スマートハウスとは、一般には、「発電設備を備え、生活に必要なエネルギーをできるだけ住まいの中で自給自足し、無駄なく使うしくみを取り入れた次世代型の省エネ住宅のことで、基本的な構成要素は、

①太陽光発電システムや燃料電池といった、電気を自前でつくりだす発電設備、
②余剰電力や電力需要が少ない夜間に電気を貯めて利用する蓄電池、
③これらをさまざまな家電製品とつないで一元管理する家庭内エネルギー管理システム、

の3つで、

①と②はそれほど目新しいものではなく、これまでも省エネ住宅という括りで登場していたが、
③のエネルギー管理システムが加わることによって、スマートさ(賢さ)というあたらしい付加価値が上乗せされた。」

との解説でした。なるほど。

そのなかの③、「エネルギー管理システム」のおもな機能には、

・現在のエネルギー消費の度合いが一目でわかるディスプレイと、
・機器使用中の「荒い」操作をあらかじめ見越して開度をセーブできる設定、
・状況に応じて通電、売電、発電、蓄電それぞれの入出力の調整

があって、なんだかECOモードボタンのついたハイブリッドカーのインパネみたいな印象です。

このシステムは「家庭のエネルギーを管理する仕組み」の英単語の頭文字をとってHEMS(ヘムス)と呼ばれて、家電・住宅設備機器メーカー各社から製品が出されています。電気の使用量制御に特化したものから電気・ガス・水道の使用量や室温管理に至るまでを計測して制御できるものまで、その範囲はさまざまです。

理論値では相応の効果が期待できて、設置に対しての国からの助成により、設置費用もかなり抑えられるようです。

HEMS,なるほどこれはよいものだということは分かります。

ただここで見過ごしてはいけないのは、これらの仕組みにできることはあくまでも「現状」のエネルギー消費の効率化だけであって、絶対量の削減とは意味合いがすこし違う、ということです。

つまり本来ならば、まずはエネルギー消費量を必要最小限に納まるよう計画しておいて、そのマイナスアルファ、削減をアシストするかたちでのHEMS導入と、いうのがスジです。HEMSはすぐれた制御システムではあるけれど、それですべてが「チャラ」になるわけではありません。

たとえば、

仮にHEMSの制御によってエネルギー消費量が現状よりも10%削減されるとします。

ある住宅Aの総エネルギー消費量を「100」とした場合、

HEMS導入後の住宅A´のエネルギー消費量は、
「100」*0.9=90で「90」になります。

同じように住宅Bの総エネ消費量が「80」、住宅Cで」では「120」だったとすると、

住宅B´:「 80」*0.9=「 72」
住宅C´:「120」*0.9=「108」

となります。

ABC各住宅のエネルギー消費量を比較した場合、

住宅A´:「 90」
住宅B´:「 72」
住宅C´:「108」

となって、

結果的にHEMS導入の住宅C´(108)は、HEMSを導入をしていない住宅A(100)、B(80)に比べて、より多くのエネルギーを消費することになります。

(財)日本経済エネルギー研究所の資料によると、

住宅における用途別のエネルギー消費の割合は、

・照明、動力、厨房 30%
・給湯       35%
・空調       35%

となっていて、それぞれを丁寧に見てゆくと、計画・設計段階でできる省エネ対策は、実はけっこうあります。

窓の位置を見直して採光条件を改善すると昼間の照明エネルギーは必要なくなるし(※)、日射遮蔽と断熱・通風を上手に計画できれば夏場はエアコンなしも可能です(参考:夏涼しく冬暖かい家②③)。

エコキュートやECOジョーズなどの高効率給湯器を選んだり、断熱を強化したりするのは、最近の動向からみるとむしろスタンダードなのかもしれませんが、改修工事ではその効果をおおいに実感していただけます。

※ちなみに弊社事務所は、窓からの光で十分明るいので日中はほとんど電灯なしですごせます。

HEMSが高効率をもたらす要因を整理すると、

・情報の一元管理と整理分析
・整理分析した情報のデータベースに基づいた運用
・それら全業務の見える化

と、まとめることができそうです。そしてこのことは、

「複数の要因をそれぞれ見極めて、全体が最適になるようにバランス取りをおこなう」

と言い換えることもできます。オーケストラにコンダクターが必要であるように、高効率のエネルギー管理にも、専任のマネジャーが必要だということでしょうか。あなたの家づくりには、全体を見渡してタクトを振れる「プロ」はいますか?

次回はシリーズ最終回、「コストパフォーマンス」についてです。

「私家版 家づくりガイド」その8(防犯)

家に求められる機能のひとつに、雨や風や雷などの自然の環境から身をまもる、たとえるならシェルターのような機能があります。

はるか遠い昔に私たちの祖先は高い木の上での暮らしから、環境の変化で森が減ってやむなく地上に降りて生活をはじめたのだそうで、そのころ住まいのまわりにはトラやライオンやオオカミなどの肉食獣がうろついて、絶えず身の危険にさらされていたようです。

現在では、家のまわりを肉食獣がうろつくことはありませんし、私が幼い頃には、田舎だったからかもしれませんが戸締りについての意識はあまりなかったようです。

が、現在では防犯の意識はもはや必須で、弊社のある境港、そして鳥取県は都会に比べればのんびりしたイメージで、窃盗などにも縁がなさそうですが、いやいや、しらべてみるとそうでもありませんでした。

鳥取県警さんの資料によると、

鳥取県内の平成22年の住宅対象の侵入窃盗(空き巣、忍び込み、居空き)は253件でした。侵入口の種類は玄関・窓・勝手口・ベランダなどさまざまですが、侵入方法についてはその8割以上が 「施錠されていないところからの侵入」 となっています。うーむ。

建築基準法には防犯に関して、特に規定はありませんが日本住宅性能表示基準には防犯性能の項目が定められています。開口部の大きさと位置によって侵入可能な開口部を選定して、ガラスや錠や面格子などの対策を講じていることが性能表示の基準となっています。

しかし、住宅への侵入の8割以上が施錠されていない窓やドアなどからならば、施錠されたかどうかをモニターなどでチェックできる仕組みがあればいいのにと思って調べてみたら、民間セキュリティ会社さんが今度営業にいらっしゃるようなので、住宅へのセキュリティサービスにそのようなシステムがないのか尋ねてみます。

ゆくゆくは携帯電話機からの操作で、その家の戸締りのすべてが可能になったりするのかもしれません。過剰な動力や機械や物性に頼る家づくりの考え方は、正直なところあまり好きではありませんが、ハンディキャップやヒューマンエラーを補ってくれるような技術の進歩には諸手をあげて大賛成です。

次回は「スマートハウス」についてです。

「私家版 家づくりガイド」その7(バリアフリー)

国民生活センターの資料によると、家のなかでおこる事故の主なものには、

・階段からの転落
・室内の床段差による転倒
・玄関の段差による転倒
・浴室での転倒、溺水

などがあるそうです。

バリアフリーはこれらの事故を未然に防ぐための対策であると捉えると、本当に解消しなければならないバリア(障壁)とは、単純に物理的な段差だけでは済まされないのだなあとあらためて思います。

日本住宅性能表示基準のなかの「バリアフリー」の項目では、

・段差の解消
・階段の寸法、仕様の提示
・手摺の設置
・通路、開口部の幅、トイレや浴室、寝室の最低寸法の提示

の各項目により、5等級に分かれた仕様が定められています。

この仕様が住宅金融支援機構のフラット35の融資基準や各自治体の改修工事などの助成金支給の基準にもなっています。

室内での転倒防止には、和室部分は摺り板を設けるか段差のない設計として、玄関や階段など、やむを得ない部分には手摺などを設けましょう。

階段での事故件数をこまかく調べると、下りの事故件数は上りの際の4倍になっています。階段の手摺を片面だけに取り付ける場合は、下りの際の利き手側に取り付けましょう。

次に触れる項目は特に、どこそこで定められた仕様、というものではありませんが、住宅の安全性についての重要なデータと提言です。それは医療分野からの、いわゆる「ヒートショック」についてのものです。

「浴室内での溺水」のうち、浴槽内への転落事故を除くと、その原因は虚血性心疾患による入浴中のもので、国立保健医療科学院の2001年の調査資料によると、亡くなられた方の数は、年間で推計1万4千人となっています。

冬季に居間~脱衣室~浴室(または寝室~トイレ)など、一般的には気温差が大きいとされる部分では、入浴やトイレの際に身体が冷やされ(入浴時には再度あたためられ)、血圧の急激な上昇と低下を招き、血圧の急激な上昇は心筋梗塞や脳梗塞を引き起こし、血圧の低下は意識障害を招くなど、ともに重大な事故につながる原因となるようです。

ヒートショックに対して、建築分野からおこなえる対策とは、各室の室温差を極力小さくすること、すなわち室内温熱環境のバリアフリー化がその主なものです。

以前のブログでも触れましたが、温熱環境のバリアフリー化対策には主にふたつの考え方があって、全館暖房と室内各所への暖房設備の個別配置がありますが、その大前提はしっかりとした気密断熱です。

家の中の障壁(バリア)は、できるかぎり取り除いて、しかもデザイン的にも自然で取ってつけたようにはならないない、機能と意匠が共存するものが理想です。

そういった取り除くべきバリアとは別に、住宅にはたとえば屋根や外壁など、暑さ寒さから人を護るために「必要なバリア」も存在します。

次回は、そうした護るためのバリアのひとつである、「防犯性能」について書きます。

「私家版 家づくりガイド」その6(音とニオイ)

本格的なシアタールームやピアノ室などの防音室ではなくても、音についての一定の配慮は必要だろうと考えています。ニオイを伴って流れる空気の向きについても同様です。

音もニオイも、感じ方によってかなりの幅を持つようですが、だからといっておおよその目安も示さない、逃げ口上のような「幅があります」には、違う思惑を感じます。

音とニオイについて、具体的に検討すべき守備範囲は、ケースによってはそれこそ相当に幅広くもなりますが、今回はそのなかで必須と思われる、

・建物内のトイレの配置と天井、壁の仕様、
・外部からの騒音対策

について書きます。

ますは音の特性についてのおさらいです。

音は、空気と固体の震動により伝わります。つまり、隙間がなく震動しにくい(=比重の大きい)床、壁、天井と開口部を持つ部屋には、音は伝わりにくくなります。

カラオケルームの入口のドアが気密用パッキンがついたやたらと重いものであったり、天井や壁の下地に石膏ボードを二重張りしたり鉛の板を貼ったりするのは、空気の流れを遮断して壁や天井の音による震動を抑えた防音室とするためです。

音のエネルギーの強さは距離の2乗に反比例するといわれています。同じ音源で、距離が2倍に延びると、音の強さは1/4に減少します。4倍だと1/16です。

これら音の特性を踏まえて、トイレの配置と、天井・壁・開口部などの仕様について考えると、一般的な木造住宅の天井と壁の下地は石膏ボードなので、質量(比重)は十分です。出入口戸の木材も遮音性はあります。

あとはいかに距離をとって隙間からの音漏れを防ぐかが「肝」になってきます。

天井と壁の隙間については、比較的容易に防ぐことができるのですが、問題は出入口の隙間です。特に引込戸の場合、構造上必ず、戸と壁のあいだが3ミリ程度空くので、ここから音が漏れます。ドアの場合、気密性は高いのですが、換気扇の給気用にドア下端をくり抜くと、やはりそこから音漏れします。つまり、特別な対策を講じないかぎり、トイレの音は出入口から漏れます。住宅の音漏れ対策は、まずはここがスタートラインです。音は出入口から漏れます。

ならば出入口を主要室からできるだけ離したり、あるいはひと部屋、または物入れなどを介すかたちでトイレを配置するプランとすると、まず問題にはならないレベルに達します。

ニオイについては、水洗であればあまり気にしなくても大丈夫でしょうが、水洗でなければ、ほぼ上記の音についての配慮と同じことが言えます。またできるかぎり外に面して、窓から換気ができるようにしておくとよいようです。
※掃除のしやすさについては、別の機会に触れます。

次は外部からの騒音対策です。

JISの規格からみると一般的な住宅に使用される窓ガラスはおおよそ、おとなりさんの話し声は遮断できるけれども、主要道路に面した騒音を完全には防げないくらいの遮音性能です。

こうした場合の遮音性向上には、この窓を二重窓(窓+窓)にしてやることが有効で、大掴みにいえば上記のような主要道に面していても、二重窓にすることによって、室内は図書館ほどになります(最近では、既存住宅用改修用の後付けタイプもあります)。

そして、木造住宅の外壁の遮音性能は、ほぼ二重窓と同程度です。ペアガラスは断熱性能は高いですが、遮音性能は通常のガラスと大差ありません。

建築基準法には戸建住宅への遮音の規定は無いのですが、日本住宅性能表示基準には使用するサッシの遮音性能(JIS)に応じた等級分け(1~3級)がなされています

外部騒音の遮音については、日当りの確保や視界の「抜け」や通風など、その敷地が持つ長所を最大限に活かすことと併せて検討すべき項目なので、一概にこれだということはできません。

原則として、騒音の方向には大きな開口を設けないで成り立つ計画をまずは考えて、それがむずかしいようであれば、プラスアルファの工夫、または製品の活用を検討する。このあたりの検討の順序は、トイレの音対策と同じです。

次回はバリアフリーについてです。

「私家版 家づくりガイド」 その5(シックハウス)

ふた昔くらい前に完成間もないお宅を訪問すると、鼻がツーンとしたり人によっては気分が悪くなることがありました。「ツーン」の原因は、主に仕上材に含まれている溶剤や接着剤の成分が揮発しておこるものだと言われていました。

そうした家に住まわれて頭痛や湿疹がでたり、さらにはめまいや呼吸器の疾患など、日常生活に支障をきたす深刻なケースもおこって、その数は次第に増加していったようです。

これら一連の症状は「シックハウス症候群」と呼ばれ、社会的な問題として1997(平成9)年ごろからニュースなどでもたびたび取り上げられています。

疲れを癒す場所の家で健康を害してしまうことは、家づくりに関わるものとしてはなんとしても避けなければなりません。今回は法令の整備など、その対策の現状を整理して、実際の設計と監理業務において気をつけるべきポイントについて書きます。

シックハウス症候群のおもな原因とされるのは、揮発性有機化合物とよばれる化学物質です。厚生労働省は2000(平成12)年、これらのうちの13種について、室内濃度指針値(「シックハウス問題に関する検討会」中間報告書)を示しました。

下記がその内訳で、舌を噛みそうな名前が並びますが、これらはみな、住宅に使用される接着剤や塗料、防腐剤、防カビ剤、防蟻剤に含まれている(いた)ものです。

①ホルムアルデヒド
②トルエン
③キシレン
④パラジクロロベンゼン
⑤エチルベンゼン
⑥スチレン
⑦クロルピリホス
⑧フタル酸ジnブチル
⑨ラトラデカン
⑩フタル酸2エチルヘキシル
⑪ダイアジノン
⑫アセトアルデヒド
⑬フェノブカルプ

厚労省の指針を受けた国交省は2003(平成15)年、建築基準法を改正しました。その内容を要約すると、

・ホルムアルデヒド(厚労省指針の①)の使用制限
・クロルピリホス (  〃      ⑦)の居室への使用禁止
・室内換気の基準と換気設備設置の義務付け

が定められました。これらは「シックハウス法」とも呼ばれています。

日本住宅性能表示基準には、設計の仕様は定められていません。よって等級づけもありません。そのかわりに、建物の完成時に室内の化学物質濃度を測定して、その値を表示することができるよう、定められています。

測定の対象となるのは、建築基準法とは異なり、厚労省の濃度指針のなかの、

・ホルムアルデヒド
・トルエン
・キシレン
・エチルベンゼン
・スチレン

の最大5物質(※)です。
※ホルムアルデヒド以外は任意選択です。

最後に実務上において、心がけていることを書きます。

法令改正以前から自然素材使用の割合が多く、機械換気システムも用いていたので、改正点について特に違和感もなく対応できた印象だったのですが、いろいろな事例を見た正直な感想として、条文の文言だけの判断では、本来の趣旨を外して十分な効果を得られなかったり思わぬ不具合が発生する可能性もあるなあと思っています。

私は以下の3つに気をつけています。

①十分な自然換気と室内通気ができるような窓位置と形状の工夫
②機械換気のショートサーキット防止
③通気確保と音漏れ対策の両立

①については、
風通しのよい家であることは、その住宅の室内環境と省エネルギー性、耐久性にも関わるきわめて基本的なことがらです。天気のよい日には窓をあけたくなる家にしましょう。これも換気を促すという意味では有効なシックハウス対策です。

②について、
給気口と排気口の位置が近すぎると、給気された空気がほぼそのまま排気されてしまい、本来の目的である、室内空気を入れ換えることができません。このことを平面計画の際に頭の隅に入れて、ところどころで位置の確認をしておくことが肝要です。

③について、
空気の流れる道が部屋を横断する場合、たとえばドアの下端をくりぬいて通気としたときに、そこから音が漏れます。最近は建物の気密性が高くなって他に音の逃げ場がないので、条件によってはこの音は予想以上に響きます。

次回は「音とニオイについて」です。