寒暖の差

境港はこのところ、日中は暑いくらいのよい天気です。

けれど朝夕は涼しい、というか朝方はむしろ寒いくらいで、と書きながらそれは案外気のせいで、毎年同じことを言ってんじゃないのかと我が身への疑いがよぎり、すぐさま気象庁の門を叩いたのですが、調べてみると今年の朝夕の気温は、やはり目立って低いようです。とはいえ今が、暖房も冷房も使わない、過ごしやすい季節であることには違いありません。

冬や夏に身体に負荷のかからない、暖房や冷房の負荷にできるだけ頼らない室内とするために、単純で自然な熱(空気)の流れになるような設計をこころがけているつもりですが、いろいろと経験してわかったのは、室内に空気が流れる道をつくることと併せて(というかむしろそれ以上に)、流れを妨げる要素を見つけ出し解消するための検討を繰り返すことが重要である、ということでした。

視界・景観を併せた敷地の周辺環境に応じて、開くところ閉じるところを見極めながらつくりあげてゆく室内環境は、いわゆる「スペック」において語られる性能値が一定のレベルに達した昨今の家づくりにおいて、その家のここちよさの指標として取り上げられるようになっています。力任せではない家に快適に長く住んでもらうことは、そのこと自体が最も合理的で効率のよいコストダウンなのだとも思います。

先日ホームセンターに立ち寄ったら、簾(すだれ)の特設コーナーができていました。高度の低い朝日と夕日を遮るその原理は外付ブラインドと同じで、日差しからの熱の8割を防ぎます。実のところ数値でいえば、Loe-Eガラスよりも高性能(併用すればさらに強力です)だったりします。

よい天気が続いていた昨日の夕方、屋根に「がこんがこん」と何やら異物が当たる音がきこえて何だろうと窓をあけたら、空から降ってきたのは大粒の雹(ひょう)というか、ほとんど小粒の氷でした。しばらくしたら止んだのですが、これは長期予報で囁かれるような、冷夏の前兆なのでしょうか。

きるならば簾を吊ってヨシズを立てて、通り抜ける風を感じながら、家のなかでゆったりすごしたり午睡したりの、例年並みの夏の暑さを待ちたいです(ビールも美味しいし)。

美しい花

美しい庭で上昇したテンションのまま、チューリップが見頃だなあと、安来市伯太町まで脚を延ばしました。

お花見スポットの町役場前に着くと「伯太チューリップ祭」は既に前の週に催されたようで人はまばらです。花は出荷の準備なのか、ところどころ摘まれていました。「見渡す限り一面のチューリップ」ではありませんでしたが、整然と咲く花はきれいで、畝のあいだを歩いたり、幹線道路まで進んで、離れた位置から眺めたりの、きもちのよい時間でした。

チューリップ、子供のころに球根から水栽培で咲かせた花は、赤や黄色だったように憶えているのですが、畑に咲く花は品種改良の成果なのか、紫やピンクなど色とりどりに鮮やかでした。

品種改良、と書くと、「ああヒンシュをカイリョウしたんだ」と、なんだかアタマの表面でわかったような気分にもなってしまうのですが、でも実際にはどんなことをするんだろうと調べてみたら、基本的には自然発生したもの同士の交配を繰り返しながらその特徴を強めてゆくとのことで、発生することに関して人間の意図は入り込めないのだそうです。きれいだなと眺めた花弁は、その色がどんなに鮮やかで希少なものであっても、それが造花であれば違った感覚になるであろう理由は、もしかしたらそんなところにあるのかもと考えたりです。

明日からゴールデンウィーク後半戦ですね。弊社は、ところどころ休んだり仕事したりの例年通りとなりそうですが、天候もよいようですから、時間をつくってお日様の下、外に出掛けようと思います。まずは庭の草刈りからですが・・・

美しい庭

「日除けの木をあたらしく植えたので、もしよければ参考に・・・」

ガーデンデザイナーのS様より連絡をいただきました。建物の竣工からもうすぐ7年目です。庭は、特にこれからの季節は緑が映えてきれいなのですが、この前までスイセンが見頃だったようで、もうすこし早く出掛ければよかったと残念に思いながらも、春本番を迎える緑を感じながら歩くのは、とても気持ちいいです。

あたらしい庭木は観賞用に設えたFIX窓の中心に映るよう据えられて、通りからの視線と、これからの季節に射し込む、高度の低い朝日をやわらかく遮ります。

塀や生垣を用いずに庭を緩衝地帯として、「ウチ」と「ソト」をやわらかく遮りながら繋ぐのは、きっと配置と樹種の選定の妙がもたらしているであろうというのはアタマでは「わかったつもり」だったのですが、こうして(庭ですが)現場で心地よさを直に感じて、あらためて建築計画における植栽、緑の効果、コーディネートの大切さに思い至った午後となりました。

S様ありがとうございました(また、相談させてください)。

積算(せきさん)作業

恥ずかしながら正直に告白すると、20数年前、新人研修の座学で「せきさん」と聞いても、そこから「積算」の文字を頭に浮かべることができませんでした。

実務上の感覚を言葉に直せば、「図面から材料の数量、工程から手間の数量を、計算を積み重ねて出すこと」といった感じですが、あれから20数年を経て、建築業界ではおなじみのこの言葉にふつうに接することができるようになったのは、成長したとよろこんでよいのか、元々の語彙の乏しさを反省すべきなのか、正直なところよくわかりません。うーん。

あらためてデジタル大辞泉を調べたら「数を次々に加えて計算すること」との説明でした。

手作業とはいえ実施設計図はCADでの作図なので、数量の読み取りもそのままパソコンの画面のなかで完結します。が、基本設計は紙と鉛筆からはじめることが多く、その場合の数量の拾い出しは手書きと手計算です。

手をダイレクトに動かすことによって得られるスケール感や、電卓の計算速度が可能にする「寄り道」は、どちらも家づくりに限らずその建築の肝(というか核というか・・)を育てるための、大切な栄養分のような気がしています。

写真は現在基本設計中の積算用のメモ書きです(栄養分たっぷりでした^^)。

桜の迷所?

境港は朝晩はまだ寒いのですが、そろそろ桜の花びらが舞いはじめています。

上の写真は先週、日吉津村から米子市内へ向かう途中に見つけた、日野川沿いの桜並木です。地元の方には例年のことなのでしょうが、こんなところに咲いていたんだと満開の花につられながら、なかば迷い込むようにしてたどり着きました。

週末なのに人気(ひとけ)もなく、進入路や駐車場の整備もされたばかりのようで、あるいは来年以降のお花見スポットとして、本格稼動の前段階なのかもしれませんが(?)、思いがけないところで桜のトンネルを楽しませてもらいました。