風のちから

指折り数えながら振り返ってみたのですが、今年は数年ぶりの「台風の上陸が早い年」のようですね。

そこで今回は建物と風について、我が身の復習を兼ねて、頭のなかを整理しながら記してみます。もしよろしければ、しばらくおつきあい願います。

ニュースなどで台風の勢力をあらわすとき、

「最大風速」(10分間の平均値)と、
「最大瞬間風速」(3秒間の平均値)と、

風速をふた通りに分けていますが、建築基準法で取り扱う風の強さは、10分間の平均値である「最大風速」のほうで、地域により30~46m/秒の範囲で定められています。

弊社がある境港市は、建築基準法上は「30m/秒」が想定される地域です。気象庁の過去の観測記録を読むと、境港のこれまでの最大値は、最大風速が19.5m/秒、最大瞬間が42.0m/秒で、ともに1991年の(「戦後最大級」と警戒された)19号台風で計測されたものでした。

秒速30m/秒は、時速に直すと108km/時です。この風を「1㎡の壁」が受けた際の風のちから、風圧力を計算すると、約54kg/㎡です。仮に、2階建て40坪程度の住宅の外壁の、ある一面が50㎡であった場合、その面が受ける風圧力は、54kg/㎡*50㎡=2700kgで、2.7t にもなります。

この値に、建物の形状と高さ、建物周囲の環境などを考慮・加味したものが、建築物の構造計画時に求められる「正味の」風圧力で、一般的な木造住宅の場合、風を受ける面に直交する壁(耐力壁)で構造を支える考え方が、その構造的な強さの根拠となります。

空気の密度は、水の「1立米あたり、1000kg」に対して「1立米あたり、1.2kg」と非常に小さく、普段その存在をあまり意識することはないのですが、集めることでヨットの推進力になり、規模を増すことで風力発電のような「エネルギーの源」となる反面、私たちの生活を脅かす脅威にもなり得るのだと、この時期にあらためて思い直しています。

残暑お見舞い申し上げます

暦の上では秋を迎えたものの、まだまだ暑い境港です。皆様お住いの地域はいかがでしょうか?

現場での挨拶が「暑いですねえ」からはじまる日々のなか、そういえば、「ファン付きの作業着」を着用している方は、この数年で加速度的に増えているようです。

台風の針路予想を横目に週間予報を眺めると、境港、そしてお隣の米子市を含んだ鳥取県西部は、まだしばらく気温の高い日が続くようです。外で作業される方も、室内ですごされる方も、適度な休憩と水分補給とで、くれぐれもどうぞご自愛ください(私も気をつけます)。

竣工( Mマンションリノベーション )

「Mマンション」は先日、リノベーション工事 が完了しました。

今回の5期工事は、これまでの1~4期に比べると平面(間取り)が若干異なり、床下給排水管のルート確定と点検口設置にひと工夫を要しましたが、電気、空調とあわせた更新により、令和の時代に見合った設備環境となっています。

建物の構造上、どうしても「表し」となってしまう、エアコン用の電線については、室内の仕上がりを損なうことがないような配線位置やカバー材選定を、また、内部建具の開き勝手と戸当たりの再検討、あるいは衛生機器についていえば配管接続部のディテールについてなど、(例によって^^)専門工事業者の皆さんには、積極的な提案とともにご尽力いただきました。

今回は1階であったため、資材搬入と産廃搬出について、これまでのような階段の上り下りの負担がなく、工事関係者一同とても助かったのですが、とはいえ経路自体は生活動線と重なってしまうなかで、マンション入居者の皆様には様々な場面でご協力を賜りました。ご高配にあらためてこの場をお借りして御礼申し上げます。

そしてオーナー様、今回もお声掛けいただきありがとうございました。

「山陰の気象条件に沿った」家づくり 番外編 1

少し前に当ブログにて、

「雨降りの日が比較的多い地域である、山陰地方に暮らす私たちにとって、買い物帰りの車から家の中に入るまでの、人と荷物が雨(や雪)に濡れない工夫は、整えると重宝する、大切な機能のひとつなのかもしれません」

と、申しあげた記事 を掲載しました。

では実際にどのような工夫が出来るのだろうかと、その後いろいろ検討案を拵えてみたのですが、今回はそのなかの「濡れない平屋案」の模型を紹介させてください。

上の写真は、前面道路が付く、建物西側を捉えたものです。写真の左手、建物の北西に部分的に見える、屋根と柱で囲まれた空間が、屋根つきの駐車スペースです。

駐車スペース奥の勝手口ドアを開けると、そこから収納庫、パントリーを経由して、建物中央に位置するキッチンに繋がります。この経路以外のルートについては当初、雨天時に濡れないで移動することは想定していなかったのですが、

模型づくりの過程で、玄関の屋根の、軒とケラバの寸法を大きく取ることで、駐車スペースから玄関(と、その奥に設けた納戸)への経路も「濡れない動線」として充分効果的に使えることがわかり、設計変更しています。

こちらの写真は(「買い物からの、濡れない動線」でありませんが)、建物南・東側です。

写真正面(敷地南側)の主庭に対して、写真右手奥(東側)のスペースは、洗濯物干しから夏の夜の線香花火まで、前面道路からの視線を気にせずに使える、プライベートな家族のための庭、として計画しました。ウッドデッキには、先述の動線同様、雨に濡れないように、上部に屋根を架けています。

完成した模型をぐるりとながめながら、あらためて考えてみると、上に挙げた「濡れない動線」の整備は、室内ではないけれども完全な屋外でもないエリア、いわば「半屋外」の空間を充実させる工夫のひとつなのだな、と言えそうです。

建物をこのような半屋外の空間で包むことは、日々の利便性が増したり、プライベートな空間で寛げるなど一見、ソフト面の充実についてフォーカスされがちですが、そこから少しピントをずらして眺めた先にハード面、具体的にいうと建物への環境負荷低減(つまり省エネ)に対する効果も浮かび上がってきます。

伸縮門扉の「落とし錠」

上の写真は、2017年 に設置した、駐車場の伸縮門扉です。

先日クライアント様より、「門扉固定用の落とし錠の開閉(バーの抜き差し)が固く、外れなくなったところがある」とのお電話をいただき、現状確認にうかがったところ・・

6か所ある落とし錠のうち、両端(外側)のバーが2本とも、上の写真のように曲がっていました。

確かな原因はわからなかったのですが、おそらく、落とし錠が施錠された(=バーが孔の中に入った)状態で、数日前の強風の、駐車場から道路、つまり上の写真の「右から左」の方向に吹いたものを門扉が受け、テコの原理も加わって、その風圧力でバーが曲がってしまったようです。早速、持参した工具で曲がった箇所の修復を試みたのですが、バーの抜き差しはなんとかできるようになったものの、元通りの「直線」に戻すことは難しいようでした。

製造元に問い合わせてみたところ、この落とし錠は、同じ仕様が現在も継続しているようで、クライアント様と相談の上、曲がってしまった2か所について、あたらしいバーを取り寄せて交換することとなりました。

後日、部品が揃ったところで、曲がっているバーを取り外し、

新しいバーを取り付け、

門扉の開閉と中央部の施錠、落とし錠の開閉(バーの抜き差し)に問題がないことを確認して、作業は無事完了しました。